結局ぼくは、「アメリカの鮒釣り」を読み終えることができなかった。
途中で休けいが必要になって、自転車で井の頭公園の池まで行ってみた。
平日だったので、池にはボートが少し浮かんでいるだけだった。
それに天気もよくなかった。
やがて雨が降りはじめて、池には一そうのボートもいなくなった。
ぼくは五百円を払ってボートを一時間借りることにした。
ぼくは手にビニールの傘と棒きれを持っていた。
傘は雨をよけるために使い、棒きれは魔法を使うためだった。
ぼくは池の真ん中まで行き、そこで漕ぐのをやめた。
傘をさして雨をよけ、持っていた棒きれで釣りをはじめたのだ。
★ブローティガン日和/友部正人★
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