いつだったかわたしは、送水管が水のいっぱい入った楽器で、
水の水面にはいくつもの鈴が小さな西瓜鎖で下げられていて、水が鈴を鳴らす、という夢を見た。
フレッドにこの夢のことを話すと、かれは結構な夢だといった。
「それだったら、そりゃきれいな音楽が生まれるだろうなあ」
わたしは送水管沿いにしばらく行ったが、鏡の像のところで送水管が川と交差している場所にくると、
身じろぎもせず、長いこと立ちつくしていた。
川の中の墓がどれもこれも光を放っていた。
みんなが、じぶんはそこに埋葬してもらいたい、と考える場所なのだ。
わたしは柱にかけられた梯子を昇って行って、送水管の縁に腰かけた。
地上二十フィートぐらいのところで、わたしは足をぶらぶらさせていた。
もう考えることもなく、目に止めるものもなく、わたしは長いことただそうして腰かけていた。
もう何も考えたくも、見たくもなかった。送水管に腰かけたわたしを道連れに、夜が更けて行く。
◇
わたしたちが恋人同士になってから、かの女はなんとよく眠るようになったことだろう。
不思議なことだった。
ランタンを手にして、夜の長い散歩に出かけた少女とはポーリーンだったのだ。
ポーリーンこそ、わたしがさまざまな思いをめぐらせた少女だったのだ。
かの女が、道を行ったりきたり、あそこで止まったり、この橋で、この川で立ち止まったり、
あすいは松林の木々の間に立ち止まったりした少女だった。
かの女の髪は金髪で、そして、かの女はいま眠っていた。
わたしたちが恋人同士になると、かの女は夜の長い散歩をやめた、でも、わたしはいまでも散歩する。
夜、長い散歩をすることが、わたしは好きなのだ。
★西瓜糖の日々/リチャード・ブローティガン★
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