宿題

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2003年07月14日(月) 玄笑地帯/筒井康隆
おまけにその一位をなんとディズニーの長編漫画映画「不思議の国のアリス」にしているのである。

さすがは星新一。おれはおどろいた。

おれもこの雑誌の映画ベスト・テンへのアンケートは求められたのだが、

悩みに悩んだ末、ついにことわってしまったのである。というのは、

おれの好みというのはたいへん片寄っていて、過去に定評を得たいわゆる名作映画というのは、

おれのベスト・テンにはみごとと言ってよいほど入ってこない。

喜劇映画がほとんどなのだ。それでもいいではないかと一方では思ったりもしたのだが、

そんなものはどうせ集計の際、百位以下ということで切り捨てられてしまうのだ。

労力が無駄となり、こっちは馬鹿と思われる。癪だからことわったのだ。

ところが星新一が一位にあげたのはアニメーションであった。

喜劇映画でさえ入れるのをためらっている人間にとっては盲点でもあり、

想像もしていなかったことだ。

それもディズニー映画として最高傑作といわれている「白雪姫」ではなく

「不思議の国のアリス」なのである。そうか。

ベスト・テンのアンケートというのは実にこういうところにこそ価値があったのだ。

そしてまた自己主張の場でもあったのだ。

おれは「不思議の国のアリス」を見た数十年前のあの感動をまざまざと思い出した。

あの感動をなぜ忘れてしまっていたのだろう。

原作である「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」をすでに読んでいたおれは、

あのすごい話と、クイズの如くまた迷路の如き文章がどうやって映像になり得るのか、

出来るわけがないと思いつつ見に出かけ、その懸念をみごとにふっとばされた上、

ほぼ原作通りの感動が得られたことによって涙さえ浮かべておったのではなかったか。


★玄笑地帯/筒井康隆★

マリ |MAIL






















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