さて、四つめの弱点です。それは小さい子です。それも特に女の子です。
ですから、わたしのいとこの二つの女の子、乃野子ちゃんには、とても弱いのです。
乃野子ちゃんが、覚えてしまった、
「お手」
「おすわり」
などのことばにも、その通り命令にしたがってあげたりします。
わたしは、ムツ氏の弱点ではないと思います。
でも東京にいった時など、仕事でホテルから一歩もでれないといって、
わたしにとても気を使ってくれるのです。
忙しい中を買い物に行ったりします。そして、
「学校に行く時着ていけるようなシャツを買いなさい」とか、
「このレコードは持っているか?」ときいてくれます。
わたしはパッと顔色をみただけで、疲れているとわかるので、
なんとも言えない気持ちになってしまいます。
ですから、わたしもムツ氏には弱いのです。
どうしていいかわからないような、それでいてすまないような、
うれしいような不思議な思いです。
たとえママとかげで「パパのあのセンスひどいね」などと言っても、面とむかってしまうと、
そんなことはケロっと忘れてしまって、なんにも言えなくなってしまいます。
★わが父・ムツ氏の六つの弱点/畑明日美★
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