(自分の蔵書の数が)判明したのは、離婚のおかげです(笑)。
人間たちは自分の勝手な都合で別れ別れになっていきますが、最後に、本が残る。
本には足がないものですから、自分では動けない。
人間たちはすっかり逆上してますから、本のことなど誰もかまわない。
はっと気がついたら、膨大な本が残っていた、ということになったわけです。
この時、「その道のプロというのはすごいものだなあ」とつくづく感心させられました。
僕とかみさんが、どうもうまくいってないらしいという噂が流れた瞬間に、
古本屋さんがやってきたんです(笑)。
「必要があったらうちが引き取ります」と、三件ぐらいやってきました。
「えッ、どうして?」って言うと、「いやいや。、まあそういうときもあるでしょうから」とか言って、
ごまかして帰っていく。本が言い付けに行くわけはないし、いったいどこから聞き付けたんでしょうか(笑)。
★本の運命/井上ひさし★
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