かつて人類が洞窟に住んでいた頃、体の動く奴は狩りに出掛け、
頭の切れる奴は狩りの獲物をかすめた。
体が弱く頭も悪い奴は死んだ。だが、そのままでは人間は人間になれなかった。
体が弱く頭も切れない奴らは、なんとか絵を描くことを覚え洞窟を飾った。
狩りはできないが踊りがうまい奴がいた。
足は悪いが語りべとなって人々を楽しませる奴もいた。
そうやって弱者にも糧を得、子孫を残すチャンスを認めたからこそ人間は人間たりえたのではないか。
例えば動物の世界では身体障害者は子孫を残せず野垂れ死にを待つばかりだが、
もしかしたらそいつらの遺伝子にはのちのち「凄い奴」を生み出す情報が入っていたやも知れぬ。
つまり人間だけが持つ文化というものは、
弱者の遺伝子に隠れた「凄い奴」をつぶさないシステムのことをいうのではないか。
そんなふうに私は思う。
というかそんな文化の中にしか私の居場所はとりあえずない。
★この日本人に学びたい/松尾スズキ★
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