人間が堕ちていく瞬間というか、水は低い方に流れるという話をやりたいんです。
どんどん堕ちていく、堕ちていくということに関して甘美な思いを抱いているような。
◇
過去の作品に人が堕ちていく話はいくらでもあるけど、もっと面白がっていたから。
今はそうじゃなくて、もっと切実に堕ちていくことを受け止めざるを得ないという感じなんですよね。
◇
他の劇団には絶対できないようなね。
そして本当に一回性の、もう再演もできないような。
再演したらカミさんに怒られるくらいの話にしたい。
結構ぎりぎりなところに自分を追い込みたいという気持ちがあって。
やっぱりなんかこう、ルーティンワークになってきているんですよ、劇場をとったから芝居を書くっていう。
その関係性一回壊したいぐらいの欲望を作品に持ち込んでみたい。
堕ちていくという妄想から脱却するためにも、完全に堕ちて底につきたいというか。
完全に底にタッチしてまた這い上がっていくという、そういう再生の話。
◇
どこまでが本当でどこまでが嘘かというのは、自分の中でもわからないくらいにシャッフルしておきたい。
俺は荻野目慶子に恋をしているのかしていないのかもわからないみたいな。
そこはあえて明確にしたくないんです。
今、意図的に恋をしようとしてるんですよ。
そんな意図的な恋っていうのは成立するのか。荻野目さんにもまだ言ってないですけどね。
★体内に鳴り響く業◇SWITCH vol.20/松尾スズキ★
|