どこにいるのか分からないパトロンを捜しはじめる。
何のパトロンかというと新雑誌が出したくなったからで、その雑誌名がとてもいい。
うっかり今喋っちゃうと、お先に頂戴されてしまいそうだ。
仲間にだけ話して登録してからにしたほうがいい。
それも面倒くさいなあ。よし言っちゃおう。
「心配するな」というタイトルだ。どうだ。とてもいいだろう。
さっそく表紙のデザインを考えなくちゃならない。
◇
四十年前の話になるが、パリのデザイナーのジャン・パトゥが秋のシーズンをひかえて、
これならだいじょうぶだと思う色が浮かんでこないので夜も眠れなくなった。
そんなある朝はやく、外気をすいに出て公園のベンチにかけたとき、
足もとの木の葉がたくさん落ちていたが、木の種類によって落ち葉の色もすこしずつ違っていた。
それを拾いあつめた彼は濃淡の度合いで十二種類になる茶系統色を、
落葉色として売り出したのだった。
◇
レコードという物質は、創造性のある微粒子を圧縮して固い円盤にしたもので、
それをカツブシ削り器を使うように針の先で引っ掻いているからで、
そんな原理を頭に浮かべた昔の人は、やっぱり偉い。
★植草甚一の散歩誌/植草甚一★
■アンアンとか宝島とか紀伊国屋でサイン会とかイノダのコーヒーとか、 さっき書かれた文章みたいなのに、巻末を見ると「1979年12月、逝去」とあって。 すごく不思議。
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