教師3 カッターですね。
教師1 カッターで?
教師4 ああ、よく彫るんだよ、カッターで机に。昔からあるでしょ。
教師1 女子の席だね。
教師4 女子だってやるでしょう。
教師3 S、H、I、……N、E。
教師4 「死ね」?
教師3 そうです。S・H・I・N・E、死ね!ですね。
教師4 誰が?
教師3 S、A、T、A、K、E、って、
教師1 サタケ?
教師2 俺かよ?
教師4 「サタケ、死ね」か、
教師3 そうですね、「サタケ、死ね」です。
教師2 俺が?
教師4 「サタケ、死ね」だよ。
教師2 (憤って)誰だよ、こいつ。
教師4 おまえ、なんか恨まれるようなことしたの?
教師2 いや、僕はべつに、
教師1 ちょっと待て、
教師2 え?
教師1 S・H・I・N・Eって、シャインか?
教師3 シャイン?
教師1 英語の。
教師4 (驚いて)英語?
教師2 「サタケ、シャイン」
教師1 つまり、こうも言えるぞ、「輝け、サタケ」
教師2 輝け、サタケ。
教師1 いいよ。
教師2 (さっきと態度豹変し)この生徒、どんな女子?
教師4 ちがいますね。
教師1 ちがう?
教師4 僕は断固、「サタケ、死ね!」を支持します。
教師2 「輝け、サタケ」ですよ。それでいいじゃないですか。
教師4 「死ね」だよ、「死ね」にきまってるだろ。
教師1 まあ、どっちかって考えると、「死ね」だろうな。
教師2 なんですか、サイトウ先生まで。
教師1 だってさあ。
教師4 断固、「サタケ、死ね!」ですね。
教師5 私もそれを支持するね。
教師2 「輝け、サタケ」ってことにしてくださいよ。
教師4 してくださいって言われても、
教師2 (なにかさみしげに)せめて、そうだと思いたいじゃないですか……。
沈黙
教師3 こっちにカタカナで書いてありました。
教師1 え?
教師2 カタカナ?
教師3 「サタケ、シネ」
★14歳の国/宮沢章夫★
■本の最後に当時の出演者の名前が書いてあって、 その中に温水洋一さんの名前があったのですが、 なんとなくサタケ先生役は温水さんっぽい気がしました。
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