宿題

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2002年07月12日(金) 麦ふみクーツェ(第四章)/いしいしんじ
五叉路の長い信号をまっていた時だ。先生がおもいだしたかのように、

「へんてこで、よわいやつはさ、けっきょくんとこ、ひとりなんだ」

と口の端からつぶやいた。

「ひとりで生きてくためにさ、へんてこは、それぞれじぶんのわざをみがかなきゃなんない」

「技?」

とん、たたん

「わざだよ」

先生はこたえた。

「そのわざのせいで、よけいめだっちゃって、いっそうひどいめにあうかもしんないよ。

でもさ、それがわかってもさ、へんてこは、わざをさ、みがかないわけにはいかないんだよ。

なあ、なんでだか、ねこ、おまえわかるか」

「それは」

たたん、とん

ぼくは足ぶみのようにひとことずつ区切っていった。

「それがつまり、へんてこさに誇りをもっていられる、たったひとつの方法だから」

「へえ」

と先生は口をとがらせ、

「ねこのくせに、よくわかってやがんの」


★麦ふみクーツェ(第四章)/いしいしんじ★



■こういうのをすぐ選んでしまうのは「へんてこ」に対する憧れがやっぱり。

マリ |MAIL






















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