とても感じの悪い女のこがいました。
両親とも娘が居間にはいってくると、泥沼の縁にあがってきたなにかのようにながめます。
学校では、机はいつも列からぽかんと離れたところへずらして置かれています。
女のこは実はすごぶるデリケートな性格でした。
ある夜ベッドで手をあわせ、天井向けてつぶやきます。
かみさま、助けてください。
もしいらっしゃるとしたら、わたしのこのへちゃむくれの外見をお姫様みたくすげかえてください!
驚いたことに、妙にひらひらした白い衣装のじいさんが頭上に忽然とあらわれました。
「おまえ、ほんと感じ悪いよな。もうどうしようもないくらい。
同情したくなるぜ。そのまま一生やってかなくちゃならないなんて」
そんな、と女のこ。なんとかしてよ、だってあなた、かみさまなんでしょう?
「もういかなけりゃ」
じいさんは新品の腕時計をちらとみます。
「サッカーの決勝があるんだよ。そうそう、おまえさ、前歯にほうれんそうがついてる」
翌朝女のこは普段より早くおきます。新学期がはじまるのです。
女のこは早出し、正門に潜みます。
そして大声あげて、やってくる生徒たちをばりかん片手に追いまわします。
★新学期/いしいしんじ★
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