今は楽隠居のような身で、坑うつ剤を飲んでは一日、十四時間くらい寝ている。
余った十時間は今度やる芝居のけいこをしたり、メシを食ったりしている。
しかしいつまでもこうはいかないだろう。
「死のう」と思ったときにわかぎが現れたように、
僕は生きる方へ、書く方へせきたてられているようだ。
こういうのは一種の天啓なのだ。
そう気をとりなおして、僕は「開いた」書物を書くだろう。
生に向かって開かれた書物、ナンセンスに向かって開かれた書物、
恐怖に向かって開かれた書物。
ぽりぽり坑うつ剤を噛みながら、僕はこれらを書くだろう。
しかし、駄作だったらどうしよう。
あ、坑うつ剤を呑む時間だ。
★アマニタ・パンセリナ/中島らも★
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