「やっと依頼がきたのね」と「ちゃーりー」が言った。
「そうさ、忙しいんだ」と僕はピザ・パイを食べながら言った。「羊博士を探さなきゃいけないんだ」
「羊博士だったら探すまでもないわよ。この近くに住んでいるはずよ。だって時々うちにピザを食べにくるもの」
と「ちゃーりー」は言った。
「どこに住んでいるんだい?」と僕はびっくりして訊ねた。
「そんなの知らないわよ。自分で電話帳しらべてみれば?だってあんた『たんてい』でしょ?」
僕はまさかとは思ったが念のために電話帳の「ひ」のページをしらべてみた。
羊博士の電話番号はちゃんと載っていた。羊男の電話番号まで載っていた。
まったくなんて世の中だ。
ひつじおとこ(無職)………367―9847
ひつじてい(酒場)…………497―2001
ひつじはかせ(無職)………202―6374
僕は手帳を出して羊博士の電話番号と住所をメモした。
それからビールを飲んでピザの残りを食べた。事件は意外に早くかたづきそうだった。
★シドニーのグリーン・ストリート/村上春樹★
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