「モンスーン」という主題を決めて写真を撮っていた学生時代の写真を並べてみることにしました。
その9分の1程度しかネガが残っていないのですが、プリントをしながら、これらの写真を撮影して
いた1970年代の頃の気持ちにはもう、二度と戻れることがないことだけが、わかってくるのです。
不摂生な生活をしてきたこともあって、肉体的な衰弱にも増して、精神の硬直はいちじるしくて、
悲しくも止める手だてはありません。元気に歩き回ったモンスーン地帯も、のんびりとした空気だけ
ではなく、その景色を変えて久しいのです。
いったい私は何を夢見て撮影を続けていたのでしょうか。
映像の可能性を夢見ることさえ、失いつつある近頃です。
写真は実存を捉えるに最もふさわしい道具だったはずなのに、こうやって眺めると、あやふやな現実
の影法師だけをすくい取り、実存の足跡さえも取り逃がしていることに気づくのです。
それは私の至らなさからだけなのでしょうか。
★写真展「Lost Monsoon・喪失」/島尾伸三★
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