図書館勤務のS君が、いま、いとうせいこう君の「小説のワークショップ」に参加していると
メールで教えてくれた。そのなかでいとう君が、「きらいなことのなかにしか可能性はない」
と友人から言われたという話をしていたそうだ。
■「きらいなことのなかにしか可能性はない」
■この言葉が含む真の意味がわかっているかは曖昧だが、僕なりに解釈しべつの言葉に
置き換えれば、「他者に出会う」ということではないか。
わかりあえる、よく理解しあえる誰かとばかりいるのは気持ちが楽だが、そこから生まれる
ものには限界がある。
「きらいなこと」という圧倒的な他者と出会ってゆくこと。
「他者」はここでは「人」のことばかりではなく、「きらいな音楽」「きらいな映画」「きらいな小説」
たちももちろん含まれる。
■それに出会ってゆくのは勇気がいる。
■めんどくさいしね。
■不愉快なこともきっとあるし。
■だけど、「きらいなことのなかにしか可能性はない」という言葉に喚起された、
いとう君の覚悟に似たものに僕も共感する。
★市松生活(Jan.29)/宮沢章夫★
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