夫はこんな私を慰める為に、いつも大ぶりなイキイキした花束を抱えてやってきた。
一抱えもあるような背の高いヒマワリは見事だった。
夫の去った跡、鮮やかな黄色の炎のようなヒマワリを見ていると、
確かにそこには夫の姿やぬくもりや匂いが感じられ、私はいつまでも見つめ続けていた。
人の思いというのは存在する、本当に存在して、疲れた者の体と心をいやしてくれるんだ、と
私はこの時いやというほど感じ入った。
涙がボロボロ流れ出してなかなか止まらなかった。
また明日も来てあげるから、と言いながら彼は私の右手をギュッと握りしめる。
それは握手というより、夫の生命力を伝えてもらっているような感じで、
私はいつも胸がいっぱいになった。
彼の手は大きくて暖かく、治療の疲れて無気力に傾きそうになる私の心を揺さぶってくれた。
その時の私にとって、彼の手の暖かさこそが生の拠りどころだったのではないか、
と今しみじみ憶い出す。
★東京日和/荒木陽子+荒木経惟★
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