お母さんの作ったごはんとか、買ってもらったセーターとか、よく見て。
クラスの人たちの顔とか、近所の家を工事でこわしちゃう時とか、よく見て。
あのね、実際生きてるとわかんなくなっちゃうけど、楽屋にいるとよく見えるの。
空が青いのも、指が5本あるのも、お父さんやお母さんがいたり、道端の知らない人と挨拶したり、
それはおいしい水をごくごく飲むようなものなの。
毎日飲まないと生きていけないの。何もかもが、そうなの。
飲まないと、そこにあるのに飲まないなんて、のどが渇いてしまいには死んでしまうようなことなの。
ばかだからうまく言えないけど、そうなのよ。
★アムリタ/吉本ばなな★
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