おれ、毎日同じことして暮らしているよ。
おれがニワトリをおっかけると、人間のやつが、おれをおっかける。
ニワトリがみんな似たりよったりなら、人間の奴が、またみんな似たりよったりなんだから、
おれは少々たいくつしてるよ。
だけど、もし、あんたが、おれと仲よくしてくれたら、
おれは、お日さまにあたったような気持ちになって暮らしてゆけるんだ。
足音だって、今日まできいてきたのとは、ちがったのがきけるんだ。
ほかの足音がすると、おれは、穴の中にすっこんでしまう。
でも、あんたの足音がすると、おれは、音楽でもきいてる気もちになって、
穴の外にはいだすだろうね。
それから、あれ、みなさい。あの向こうに見える麦ばたけはどうだね。
おれはパンなんて食いやしない。麦なんてなんにもなりゃしない。
だから麦ばたけなんか見たところで、思い出すことってなんにもありゃしないよ。
それどころか、おれはあれを見ると、気がふさぐんだ。
だけど、あんたのその金色の髪は美しいなあ。
あんたがおれと仲良くしてくれたら、おれにゃ、そいつがすばらしいものに見えるだろう。
金色の麦をみると、あんたを思い出すだろうな。
それに、麦を吹く風の音も、おれにゃうれしいだろうな。
あんたが、あんたのバラの花をとてもたいせつに思ってるのはね、
そのバラの花のために、ひまつぶししたからだよ。
★星の王子さま/サン・テグジュペリ★
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