ある詩人の先生が、わたしの作った曲を聴いて、「あなたは秒針音楽師ですね」と
名付けてくださって、それはそれで気に入っているんですが、でもやっぱり、わたしは
「小さな音楽をつくるものです」とつけ加えたくなります。
そうです・・・「小さな」というのは、まずひとつに、楽曲そのものがとても短いんです。
「秒針音楽師」というくらいですから、一曲の長さを計るのに本当に「秒針」だけあればいいんです。
長針も短針もいりません。一分を越える曲というのが、ほとんどないんです。
どの曲も数十秒・・・でなければ数秒で終わります。
いえ、長さが「短い」「小さい」ということだけでなくて、なんというのでしょう・・・テーマ?
というのも大げさなんですが、何かそういうものからして小さいんです。わたしの曲は。
たとえばですか?
ええと・・・たとえば・・・「一枚の落ち葉のための音楽」というようなことでしょうか・・・。
「一本の煙草のための音楽」というのもつくったことがあります。
あとはそうですね・・・ジグソーパズルのひとかけら。
そう・・・「針の穴をくぐり抜けるためのソナタ」なんていうのもあります。
短い曲ですけど、一曲つくるのに、ひと月くらいかかるときもあります。
ときどき、つい思い入れが過ぎて、どんどん大きな曲になってしまうんですが、 それではだめなんです。
とにかく、なるべく、さっとつくり上げてしまうことが大事です。
そして、それをすぐに「楽譜」にするんですが、もちろん、楽譜も小さいです。
掌に収まるくらいの大きさ。胸のポケットにはいるくらいの。そういうハンカチみたいな楽譜です。
・・・ええ、もちろん、小さな音で演奏されます。ほとんど聞きとれないくらいに小さな音です。
それで、あっという間に終わってしまいますから、わたしの曲を聴いた人は
「えっ?いま音楽が流れたの?」って必ずそう言いますね。
★『秒針音楽師』じつは、わたくしこういうものです◇太陽 NO.472/クラフト・エヴィング商曾★
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