「神学寮というところは神父さんの卵が入るところじゃないですか。
ぼくたちは神父になるつもりはありませんよ。」
「なるつもりで行かにゃあかんよ」 「それはこまります」
「神学寮から大学に通うんや。それでやね、大学を卒業したら、神父には向かない、
といえばよろしいんのや」
ぼくらは驚いてモッキンポット神父を見た。
「・・・・・・そ、そんなの詐欺ですよ」
「ドタマかちまくよ」
と、神父は優しくいった。
「今のところ、あんたたちにこれ以外に道はないんや。
生きるための嘘や。われらの主キリストも、目をつむっていてくださると思うわ」
★モッキンポット師の後始末/井上ひさし★
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