山田川のほとりのテトラポットのとぎれる所 三畳くらいの空地があって
そこにフジオさんが住んでいた
うすら寒い三月 テトラポットのすきまの穴に パチンコ帰りの散歩をしてたぼくが落ちて足をくじいた
ずぶぬれのぼくを背負い家まで連れていってくれた 川岸を息をあらげ家まで急ぎ足で歩く
ダシの効いた感じのニットキャップのお似合いな人
常田富士男にそっくりなので ぼくはフジオさんと呼んでいた
やがて夏が来たけど ニットキャップはかぶったままで 煮しめたみたいなTシャツ着てた
フジオさんは生きていた
知り合って何カ月か ぼくらは女のことだとかバクチのこと
くだらない話したりビールを飲んで川を見てた
知り合って 6ヶ月で別れた女たちはいたが 死んじまった男なんていないよ
いつもつながれてた雑種ドッグが声をからして たぶん助けを呼んでたのだろう
ぼくはフジオさんを見つけた
山田川のほとりのテトラポットのとぎれる所 三畳くらいの空地のそばで
そばでフジオさんは死んでいた
誰に会いたかったのか? 墓はどこにしようか 犬はどうしようか 誰に知らせようか
★ニットキャップマン/ムーンライダース★
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