○プラシーヴォ○
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もう本当に私は疲れていた
新しい仕事に就いて丸一週間目
体を使う接客業で 私はもう本当に ヘトヘトだった
なのに
私は今、歩いている
ハム男の家から歩いて20分ほどの 写真屋へ、写真を現像するために
「車に乗って出かけるのに どうして駐車場をとおりすぎて ここまで歩かなきゃいけないの?」
「俺、写真屋の側に自転車置きっぱなしだったんだ」
写真屋の前で一旦別れる
ハム男は、自転車で駐車場まで少し戻って 車を取ってくると言った
5分後、徒歩のハム男が 帰ってきた
「自転車盗られてた」
「それはいいけど… なんで徒歩で帰ってくるの 駐車場まで歩いていって 車で帰ってきて欲しかったんだけど」
ハム男が首をかしげる
「お前はVIPか?」
私の手を引いて、グイグイと歩いていく
後で7月上旬並みだと観測された今日
暑い暑い どうして私、歩いているの
フラフラで、ハム男が行きたがっていた スーパーと百貨店を足して2で割ったような ところへ到着した
晩御飯の材料を買おうと 食料品売り場へ流れ込む
頭がボウッとする
ただでさえ 料理嫌いの私なのに
とてもじゃないけど 買い物なんてする気にならない
このままこの冷たそうなリノリウムの床に 倒れてしまいたいほどだ
「何しようかな… エビフライとか、どうかな」
ああ、眠い 気分悪い
はっと
気がつくと
目の前に露骨に不機嫌さを表現した ハム男が立っていた
右手に冷凍ブラックタイガーを持って
そして苛々と私に言葉をぶつけた
「なんでそんなにダルそうなの? 俺が一生懸命料理のことを考えてるのに 一緒に材料を探そうともせずに…」
だって、しんどいんだもん
ハム男、初めて怒ったね
怖いよ
クルリと背を向けると ハム男は一旦カゴに入れた材料を 次々と棚へ戻し始めた
「出前とろう 今日は料理するのやめた」
怖い怖い
帰りの車で
「ごめんね 今度ちゃんと料理するから」
ん。
短くハム男が返事をした
ねえ、別れようか
返事を、してくれなかった
どうして 否定してくれないの
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