○プラシーヴォ○
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通勤時間がさらに長くなっちゃうから 今日は、自分の家に帰りなさい
と
何がなんでも私を家へ帰そうとする ハム男
だけど私は首を縦に振らなかった
「今日も、ハム男の家に泊まるから」
がちゃ子がそうしたいのなら 別にいいけど
ハム男は呆れたように 笑った
とりあえず、 お芝居を見る約束があったので 一旦ハム男の側を離れる
22時頃、電車の中で携帯が鳴った
「ハム男? 今から帰るからね」
電波が悪くてすぐに切れた
慌ててかけなおして もう一度同じことを言う
電波が悪いと思っていたけど 一度目の言葉もハム男に聞こえていたらしく
「なんで、何度も同じことを言うの? …迎えに来て欲しいの?」
ガツンときた
迎えに行ってあげようか
ではなく
迎えに来て欲しいの?
少し違うだけで こんなにデリカシーの無い言葉になる
ウウン ムカエニキテ イラナイヨ
とぼとぼと夜道を歩く
イラナイと言ったからには 拗ねるのを止めよう
部屋に入ると にこにこ顔のハム男
私も慌てて笑顔をつくる
ビールを飲んで テレビを見て 笑う
でも、さすがに付き合い出して 2年とちょっと
私の体から出る 張り詰めた空気を感じ取ったらしい
私の目の前ににじり寄って 私のおでこの傷をそっと両手で触ってる
虫に刺されただけの たあいの無い傷
それが、まるで 何十針も縫った傷のように ハム男が何度も何度も撫でる
そしてそこにキスをする
唇にも
「…可愛いなあ がちゃ子は」
ふと視線を上げると 酔って真っ赤になったタコ… いえいえハム男の顔
ああ、楽になった
怒るのって疲れる ハム男、ありがとう
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