○プラシーヴォ○
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会社のトイレに入ると、少し血が出ていた。 生理が、きた。
『ドキドキさせてごめんね。 だけど、まだお母さんのお腹には帰らないよ』 っていうあの子の声が聞こえた気がした。
祖母と祖父が今年たてつづけに天国へいったので、 二人がひ孫をあやしてくれているのだろうか。
そうだね、こんな夢もなにもない 困り果てたお母さんのところになんて まだ来たくないよね。
今妊娠してたら、とりあえず出産や育児をすることで 私の生きる理由ができるだなんて 貧困なことを思ってしまった。
あなたが産んで欲しいと思うような 充実した人間になるね。 もうちょっと待っててね。
そういえば、去年の今日に 私はあなたの存在を知った。 妊娠検査薬を持ったまま、 蒸し暑いデパートのトイレで途方にくれていた。
早いね。もう1年。
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