明け方になって急遽、彼のところへ行くことになった。
ものすごく自分を無能に感じるときは、誰かが側にいてくれた方がいい。 自分の駄目さ加減に、久しぶり涙した。 「自分で考えているよりあなたは無能な人間ではない」彼はそういった。
いや、無能というより、私は人間的に未熟なのだ。 それは普段からいやと言うほど自分で自覚していることだ。 独りよがりな憂いに放心したり、無駄に傷ついて塞ぎ込んだり。 それらを回避することは単純で、簡単なことなのに。 やるべきこと、やりたいことをやれば住むことだ。 でもそれが、それすら、できない。 だから私は無能なのだ。
これまで自分が傷つけてきただろう人のこと、 傷つけられた人のことを、私はよく思い出す。 人の心を傷つけるのに、何か大きな諍いや裏切りが必要なわけではない。 いつも思い出すことは本当に些細なことだ。
私は彼らが幸せであって欲しいと心から願う。 そして彼らにも、少しで言いから私を思い出して欲しい、許して欲しい、と。
そう思うことで私は結局、いつも誰かに甘えているのだ。 やっぱり私の心が未熟で弱いからなのだろう。 受け入れられたいから受け入れるだけで、無償ではないのだ、 きっと、多分。だから弱い。
自宅の最寄駅で新幹線の切符を買ってローカルへ乗り込み、 そのまま新幹線の改札へと向かった。 朝一の新幹線は思いのほか混んでいて驚いた。 「月曜日はこんな感じだ」と彼は言った。 駅構内で買ったオニギリとお茶、昨日買ったドーナツを二人で食べた。 しばらくすると彼は眠ってしまった。 私も昨日から寝ておらず疲れてはいたが、なかなか寝付けなかった。 ながれる景色を見ていた。 私が今、東北に住んでいることを改めて実感した。
東京駅から彼のオフィスがある四ツ谷まで一緒に向かった。 本当はそこで別れて私は彼の家へそのまま向かう予定だった。 しかし、私と彼は一緒に四ツ谷で降りた。 四ツ谷でおりるのは初めてだ。 駅をでたらすぐ上智がみえた。出勤時間でサラリーマンが歩道を埋めている。 私は彼の働いているビルを一目みて帰る予定、そして写真も。笑 最近、私はカメラを持ち歩いている。私が帰省するまでにたくさん写真をとってきて欲しい、と母が言った。でもそれは、私がどんなところに住んでいるかを知りたいという理由だから、四ツ谷とは何の関係もないんだけど。 彼は普段の通勤ルートとは別の道を通った。もちろん私と一緒だから。 通勤者であふれる歩道から外れ、ベルギー大使館まえを通過し公園を抜けると、 彼のオフィスがあるビルに到着した。反射ガラスが光る、ブルーのビルだった。 彼の態度がますますよそよそしくなり「しってる人がいるから、いくよ。」 と小声で言うと、さよならも言わずにビルに入っていった。 私は周りにいる人を全く気にもせずビルを二回、激写し、 彼の本来の通勤ルートである大通りの歩道へでると、多くの人とは逆行して駅へ向かった。 小魚の群れを割るマグロかなんかの気分になった。
寝てないせいか、頭が痛くてぼーっとしていた。 そのせいで逆行してしまった。市ヶ谷でそそくさと降り、軌道修正。
電車を降りる。 夕食の買い物を朝一のイトーヨーカドーで済ませ、バスに乗って彼の家へ。
彼の家へきたのは久しぶりだった。 まえより少し整理された部屋に入った。洋書が増えていた。 ヨーカドーで買ったカツサンドとコンビに出買ったオニギリとお茶を食べ、 ベッドに横たわっていたら知らない間に眠っていた。 起きたときはもう夕方で、私は買い忘れたものを足しに近くのスーパーへ。 ほどなくして彼が帰宅。
サバと大根と豆腐生姜煮 大根とマイタケのコンソメスープ マグロのカルパッチョ マグロめかぶ納豆 トマトとバジル、モッツァレラのサラダ ご飯
久しぶりにきちんと夕飯を作った。 彼の家の食器がどれもすばらしい物なので余計においしく見えた。 いや、味もんまかったけど。
と、今日はこんな感じの一日だった。 私はここにきて、本当に良かったのだろうか。 ただ自分の無能さを増長させるためだけにきた気がして怖い。
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