Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2008年03月16日(日) なぜ日本の銀行はレベルが低いのか



「 倒産のない資本主義なんて、地獄のないキリスト教みたいなものだ 」

        フランク・ボーマン ( 元宇宙飛行士、イースタン航空 CEO )

Capitalism without bankruptcy is like Christianity without hell.

                                 Frank Borman



もし、貴方が 「 ヤクザ 」 や 「 詐欺師 」 なら、どんな手下を雇うだろうか。

あまり馬鹿でも困るが、優秀すぎたり、正義感が強いのも手に余るだろう。


1990年、住友銀行前副頭取の 西 貞三郎、住銀常務から伊藤萬社長へと送り込まれた 河村 良彦、住銀常務の 松下 武義 らが、世間を騒がせた。

おりしもバブル経済の最中、彼らが地上げをし、続々と仕手筋に融資して、住友銀行を都銀中で収益随一の地位まで押し上げた頃の話である。

彼ら三人は、いずれも “ 銘柄大学出のエリートではない ” という共通点があり、出世のためには、敢えて危ない仕事に手を染める事情があった。

狡猾で知られた当時の元会長 磯田 一郎 は、銀行の使命と社会的責任を無視し、ダーティワークをこなす “ 汚れ役 ” に彼らを指名したのである。

住友家には 「 浮利を追わず 」 という家法もあったが、磯田 指揮下の住銀は、不動産、株式という 「 浮利 」 を、都合のよい手下に命じて貪った。


その後、磯田 一郎 の重用した 河村 が、こともあろうに “ 地上げ屋 ” の 伊藤 寿永光 を伊藤萬の常務にしたことから、住銀は窮地に立たされる。

絵画取引を中核とした 「 イトマン事件 」 が発覚し、その背景には、住銀による不正融資があったことなど、彼らの供述から事実が明るみにされた。

同じ頃、仕手グループ 「 光進 」、「 誠備 」 に不正融資をした疑いで、住銀 青葉台支店 の 山下 章則 支店長 が逮捕され、磯田 は会長を辞任する。

これが住友銀行の不正融資をめぐる 「 イトマン事件 」 の概要だが、古くは1958年の 「 千葉銀行事件 」、1970年の 「 富士銀行事件 」 などもある。

先日、三井住友銀行が不動産会社の紹介にて貸し出した170億円のうち、100億円が回収不能と発表されたが、これも “ 不正 ” の疑いが強い。


1987年の春には、野村、大和、日興、山一 という日本の証券大手4社が、ニューヨーク証券取引所への上場を見送る “ 事件 ” もあった。

上場すれば、年4回の株主向け業務報告や、子会社も含めた連結決算の迅速な発表といった厄介な事務仕事が増える。

また、捜査部門だけでも240人 ( 全体職員は2000人 ) を擁する 「 SEC ( 証券取引委員会 ) 」 があり、インサイダー取引は即座に摘発される。

日本では許されているルーズ、またはダーティな取引が、ニューヨーク証券取引所では通用しないことを知り、彼らは上場を見送ったのだ。

その後、1989年には三菱銀行が上場したが、当時、日本の全銀行、証券、生保のなかで、わずか1行しか上場できないというのが実態であった。


世界の銀行ランキングにおいて、日本の都市銀行は上位を占めているが、それは、財務省の傘の下で、保護され、カサ上げされた結果である。

銀行や証券という “ 道楽息子 ” を財務省が甘やかさず、厳格にしてフェアな国際ルールで競争させたら、たちまちランクは急降下するだろう。

現在、「 新銀行東京 」 の経営難に関し、“ 素人に何ができる ”、“ 公務員に銀行の仕事が務まるか ” などと、数々の批判が飛び交っている。

たしかに、公務員と違って銀行員の場合には、業績が悪ければ 「 クビ 」 になることもあるし、常に採算を問われる立場にあるだろう。

しかしながら、「 倒産がない ( 倒産させない ) 」 という点からみて、日本の銀行は役所と大差ないわけで、ここが一番の問題点なのである。


どんなに犠牲を伴おうとも、企業はその責任を 「 倒産 」 という形によって負うべきであり、それなくして資本主義社会の健全化、浄化はあり得ない。

過去において、日本の金融スキャンダル、銀行破綻に際し、たとえ預金者に損害が生じたとしても、公的資金を注入したことは 「 誤り 」 である。

仮に、東京都が新銀行東京に、アメリカがサブプライムローンに関して公的資金を投入したとしても、今後、民間の金融機関は救済すべきでない。

昔と違い、いまの都市銀行は下品にも 「 公然と “ サラ金 ” を傘下に置いている 」 が、多重債務者の増加は、本体の経営を圧迫する危険も孕む。

近い将来に、「 サラ金は、一種のサブプライムローンですよ 」 と開き直り、彼らが公的資金の捻出を要請する危惧もあるから、ここは要注意だ。






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