| 2008年03月03日(月) |
海上自衛隊の護衛艦が、またも接触事故 |
「 何事も小さな仕事に分ければ、とりたてて難しいことではなくなる 」
ヘンリー・フォード ( アメリカの事業家、自動車王 )
Nothing is particularly hard if you divide it into small jobs.
Henry Ford
本来、どこの組織にも “ 雑用 ” という仕事はない。
軽い仕事だと思って雑にやるから、それが雑用になってしまう。
私が最初に入社した商社は、「 ラーメン から ミサイル まで 」 販売するような企業だったが、新入社員の頃は、そんな実感がなかった。
組織が大きくなると、仕事は細分化されており、自分の仕入れた小麦粉がラーメンになるとか、小さいボルトがミサイルになるとは想像し難い。
もちろん、頭では理解しているのだが、特に若い頃は、目先の仕事に追われていると、なんだか 「 ちっぽけな作業 」 を繰り返している気になる。
たかが歯車、されど歯車で、一つひとつが重要だし、そんな 「 当たり前 」 の単純な作業から馴れていかないと、大きな仕事もこなせない。
大きな仕事ほど、小さなところに神経を集中し、けして手を抜かず、全員が心を一つにして取り組まないと、満足する成果に辿り着けないものだ。
イージス艦の事故発生から日も浅いが、今度は、ベトナムのホーチミン港に入ろうとした海上自衛隊の護衛艦が、停泊中の貨物船に接触した。
けが人はなく、護衛艦は艦尾部分がへこみ、旗ざおが曲がる程度の被害、カンボジア船籍の貨物船は、塗装がはがれた程度の被害だという。
原因は明らかにされていないが、護衛艦の艦橋にいた現地の水先案内人による指示にミスがあった可能性もあり、現在、海自で調査中とのこと。
ただ、たとえそうだったとしても、接触事故を起こした事実に変わりはなく、護衛艦側に操船上の過失があったことは、言い逃れができない。
ガソリンスタンドを出るときに、どれほど店員の誘導が下手だったとしても、出会い頭に事故が起きれば、ドライバーの過失が問われるのと同じだ。
どんな組織にも、全体が直面している課題を 「 他人事 」 としか捉えられず、自分もその一端を担っている意識に乏しい人がいる。
福田総理による涙の謝罪や、石破防衛大臣の更迭騒ぎを見るまでもなく、いま、海上自衛隊に対し、世間はどのような目を向けているかは明らかだ。
だからといって萎縮する必要はないが、この期に及んで事故を連発させるのは、「 緊張感が足りない 」、「 反省が足りない 」 とみなされるだろう。
いくら最新鋭の艦船を所有していても、一つひとつの緻密な作業が完璧に実行されなければ、円滑な操舵や、任務の遂行が期待できない。
周辺諸国に対し、「 自衛隊の船は、マトモに着岸すらできない 」 という情報が流れることも、外交上、防衛上の大きなデメリットになってしまう。
ここは、大臣の更迭よりも、海上で実務に就いている将兵の意識改革や、技術力、集中力の向上、士気の改善が急務であろう。
平和ボケした国の軍隊とはいえども、かように “ たるんでいる ” 状況では有事の不安が否めず、もっと 「 練兵度 」 を高める必要があるはずだ。
憲法九条がどうとか、軍備がどうとか、戦略がどうと語る以前に、各将兵が自分の役割を確実にやり遂げる修練を積むことこそが、最も重要である。
一人のキーマンではなくて、無数の隊員が、それぞれ崇高な理念をもって行動しなければ、国防能力は向上しないだろう。
昔から 「 企業は人なり 」 と言うが、自衛隊においてもそれは同じで、個々の隊員の意識レベルが低い状態で放置されると、国防の将来が危うい。
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