Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2004年10月11日(月) GOD!BUDDHA!YAGI!


「 経営方針の手引書が必要なら、十戒を印刷することだ 」

        ロバート・タウンゼンド ( エイビス CEO=最高経営責任者 )

If you have to have a policy manual, publish the Ten Commandments.

                            ROBERT TOWNSEND



ビジネスの世界では、なかなか 「 きれいごと 」 が通用しにくい。

だからといって、非合法な手段を用いれば、それなりの報いを受ける。


つまりは、「 たとえ困難でも、正しい方法で成功する 」 ことがルールであり、それに背いては、長期的な繁栄など期待できないのである。

また、「 己の身の丈に合った商売に徹する 」 ことも大事で、無理な資金繰りで過剰な投資を行うことは、常に危険に身をさらす状態へと陥る。

その程度のことは、普通の能力を備えた経営者なら、誰でも理解しているはずなのだが、ちょっとした 「 気の迷い 」 で基本を忘れる者も多い。

いわゆる 「 初心忘れるべからず 」 ということなのだが、事業規模の拡大や変化の波にさらされ、「 初心 」 は 「 変化への対応 」 に打ち負けやすい。

周囲からみれば 「 驕り 」 と 「 傲慢 」 に冒された 「 単なる愚か者 」 なのだが、本人はいたって真面目に 「 経営者 」 のつもりなので、たちが悪い。


敗戦後の日本は、未曾有の好景気に沸き、経済は隆盛を極めた。

まことに結構な話なのだが、経済最優先の世の中にあって、産業の裏側に潜む 「 公害 」 や 「 環境破壊 」 に対する配慮は、二の次にされてきた。

それらが社会問題として脚光を浴びたのは、人々が窮乏から立ち直って、経済大国の仲間入りを果たした後のことである。

極端な好景気の渦中にあっては、物事の本質や正当性が置き去りにされ、物質的な豊かさと、虚飾の繁栄に、社会全体が狂奔しやすいものだ。

バブル崩壊後の社会は、食品業界の不祥事や自動車会社の怠慢を暴き、年金の将来性を憂い、不良債権など 「 過去の贖罪 」 に目を向け始めた。


そういう意味では多くの人々にとって、不況の期間というのは 「 物事の本質や正当性を、改めて考え直す時間 」 でもある。

好景気に沸いている時期は、それを 「 後ろ向きな意見 」 と捉えられたり、進化や成長を 「 妨げる因子 」 と判断されかねない。

それに、「 作れば売れる 」 というような好況では、誰もがお金を稼ぐことに必死で、悠長に社会問題など語り合っている 「 暇 」 も少ないのである。

もし、日本に再び経済的繁栄の機会が訪れるなら、今の不況が糧になるよう、いまのうちに 「 企業は本来どうあるべきか 」 を考えておくほうがいい。

厳しい環境にあってこそ、「 見えないものが見えてくる 」 こともあるのだ。


先日、ある企業を訪問したときのこと。

玄関の見通せる応接室で先方の社長と会談していると、取引先とおぼしきスーツ姿の二人連れが、後からやってきた。

若い方 ( 20代後半 ) の男性が、受け付けの女性に 「 社長への面談 」 を申し込んでいるのだが、事前にアポは取っていなかったらしい。

女性が 「 あいにく社長は面談中なので、お待ちください 」 と告げると、彼は年配の連れ ( 50代前半 ) に、こそこそと耳打ちをした。

そして、「 すぐに済みますから、ちょっとだけ先に時間をください 」 と、かなり強引に詰め寄り始めたのである。


やりとりの一部始終を見ていた私から、社長に 「 今日は時間に余裕があるので、あちらの方をお先にどうぞ 」 と進言した。

社長は、私に対してすまなそうにしながら玄関へ向かい、問題の二人連れと10分ほどの短い会話を交わし、怪訝そうな顔をしながら戻ってきた。

彼らは、某都市銀行のスタッフで、年配の方が 「 次長 」 なのだそうだが、急な人事異動があって部署を離れるので、その挨拶に来たらしい。

後任は誰かと尋ねると、「 人員削減の折から、欠員の補充はない 」 ということで、そこで社長が 「 大変ですね 」 と労ったようだ。

すると彼らは、堰を切ったように自分たちの不遇な立場を語り続け、会話の大半は、愚痴を聞かされるだけの内容だったという。


挨拶といえば聞こえはよいが、自分たちの言い分だけを伝え、取引先へのサービスがどうなるのか、一切、何の説明もしないで帰っていく。

事前のアポも無く、つねに 「 自分たちは最優先だろ 」 という姿勢で、先客がいてもお構いなしに面談を申し込んでくる。

順番を譲った私に対して、何の挨拶も、感謝の言葉もない。

どこの銀行だか名指しはしないが、「 先ごろ、金融庁から “ 隠蔽工作 ” があった 」 と不正を指摘された、某都市銀行といえばおわかりだろう。

一事が万事とは言わないし、経済の崩壊を銀行だけの責任とは思わないが、この傲慢さと権威主義が 「 諸悪の根源 」 であることは間違いない。


経営とは 「 継営 」 であり、継続的な繁栄が目的でなければならない。

実力主義社会という言葉が流行し、「 努力 」 よりも 「 結果 」 が重視される世の中になったが、やはり正しい結果は、正しい努力から生まれるものだ。

稀に、一時的な成果が努力なしで生まれることはあっても、永続的な発展が、努力の裏付けなしで成し得ることは、まず考えられないだろう。

人間も企業も、長年の地道な努力と、日々において繰り返される基本的なロジックの積み重ねで、「 信頼 」 を獲得し、成果に繋げていくものである。

先に挙げた某都市銀行も、社是においてはそれを謳っているし、創業者の理念はそこにあったと思うのだが、横暴な輩が歪めてしまったのだろう。


話は変わるが、阪神タイガースで 「 神さま、仏さま、八木さま 」 とファンに親しまれ、愛された 「 八木 選手 」 が引退した。

彼は、代打の切り札として18年間、タイガース一筋に働いてきた選手で、派手な大記録はないが、寡黙にして堅実な 「 職人 」 である。

どちらかというと、昨年の優勝には目立った貢献をしておらず、タイガースが低迷していた頃に、一人で気を吐いていた記憶が強い。

いわゆる 「 過去の選手 」、「 地味な選手 」 で、タイガースの気風は、そのようなタイプの選手の引退を、あまり華々しく飾った歴史が無い。

今夜、彼が詰め掛けた多くのファンの声援と、敵味方双方の選手に暖かく見送られた背景には、「 継続的な努力への礼賛 」 が含まれていた。


( 本日のおさらい )

「 努力とは、正しいロジックの積み重ね 」






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