Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2004年03月12日(金) 新社会人へのメッセージ


一雨ごとに 「 暖 」 と 「 寒 」 を繰り返し、季節は本格的な春へと向かう。

若葉、新緑のイメージは、街に溢れるフレッシュマンの姿にも重なる。


日本経済新聞のコラムに、ちょっと印象深い話が載っていた。

このところ、北海道警察の 「 裏金問題 」 が、内部告発によって明らかとなり、疑惑を究明する舞台は、国会まで波及する可能性が強くなった。

原因が、警察組織の体質的な部分にあるという見方から、他の自治体における警察に対しても、同様の疑惑が持たれており、かなり深刻な問題だ。

コラムでは、この不正を告発した者が 「 引退後のOB 」 であることを、やや遺憾に思うといった旨のことが書かれていた。

たしかに、組織のモラルは現役の力によって自浄されるべきもので、現場を離れた者が懐古的に告白するのとは、少し意味合いが違ってくる。


自らの身体を賭して社会秩序を守る警察官でさえ、その現場に居る者が、組織の不条理を正すための行動をとれないというのは、悲しい話である。

その体質にどっぷりと浸かった中高年者はともかく、血気盛んな若手、新人の警察官から、なぜ、今までに内部告発者が現れなかったのだろう。

組織の論理に疑問を感じ、「 青臭い正義感 」 を振りかざしたのは、若者ではなく、引退後の OB だったというのは、なんとも皮肉な話である。

コラムからは、これから社会人になる若者達に対して、誤った組織の方針や論理に流されず、真っ直ぐに生きて欲しいと願う思いが伝わってきた。

それは、たしかに勇気の要る生き方だが、全員がそうすることによって、「 それが当たり前の時代 」 に変えていくことが、とても大事なのである。


自分の人生において、さまざまな場面で 「 競争 」 に遭遇した。

学生時代の競争というのは、部活動のスポーツであったり、受験であったり、あるいは意中の女性を射止めるための行動であったりしただろう。

社会人になってからは、社内、社外のライバルに対し、より精力的、情熱的に仕事をこなすことで、ささやかだが評価と報酬を手に入れたと思う。

オリンピックのように 「 参加することに意義がある 」 などとキレイ事を言うつもりはないが、人生において 「 勝つこと 」 がすべてではない。

本当に重要なのは、結果としての勝ち負けではなく、「 自分は正しい方法で、常に勝とうとして努力してきた 」 ということではないかと思う。


私の ( 特にビジネスに対する ) 信念は、「 Winning through Integrity = 正しい方法で成功する 」 ということであり、それ以外には考えられない。

過去を振り返ると、早く昇進したことで天狗になってみたり、手を抜いた作業で仕事を楽に処理する者を見て、羨ましく思ったりした時期もあった。

しかし、これは尊敬する上司や、同僚と共に働けたおかげだが、その度に反省をする機会が与えられ、「 何が正しいのか 」 を常に考え直してきた。

一部の企業が 「 企業の存亡に関わる不祥事 」 で崩壊していく様を見るまでもなく、正しい方法で成功することこそが、長期戦では重要になる。

正しくない方法でも一時的な勝機を掴むことはあるし、そういう人を何人も見てはきたが、その中に 「 いまも勝ちつづけている人 」 は一人もいない。


以前にも述べたが、私は 「 勝ち組、負け組 」 という言葉が嫌いだけれど、しいて 「 勝ち組 」 の条件を挙げるなら、正しい方法で成功することだ。

ただ、私のように恵まれた環境ではなく、腐敗した組織構造の中に身を投じてしまった社会人も、気の毒だけれど存在するだろう。

もしも新社会人や、若年層の中にそういう人がいるのなら、できるだけ若いうちに、情熱をもって組織の不正に立ち向かってもらいたいと思う。

年をとってから生き方を変えようとするのは難しいし、間違った倫理感に長く浸ったあとでは、何が正しいのかさえ、判らなくなってしまうだろう。

なかには、「 そんなことをすると、居づらくなる 」 と仰る方もいるだろうが、そんな腐った組織からは早く足を洗うほうが、貴方の将来のためになる。






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