ようやくちょっと落ち着いたわ。 まだいろいろやらなあかんことはあるけどさ。
あんたら離婚したからお父さんは居らんし、 親戚は居らんし、兄弟も居らんし、 ほんまに私一人きりやから大変やったよ。
私、会社でのお仕事だけはできるらしいけど ああいう社会性の必要なことってイマイチ駄目やからさ。 でも、友達も彼氏も来てくれたし大丈夫。
発見したときに一生懸命心臓マッサージしてくれたのが、 いつもいちばん理解してくれてる私の友達やで。
お骨持って帰ってきたときに急いで祭壇作ってくれたのが、 ずっといっしょに住んでる私の彼氏やで。
お母さんが倒れてるのん発見したん、5/11の夜やったわ。ごめんな。 お医者さんに来てもらったらさ、5/8ぐらいやってんて?倒れたん。
死因は心不全やて。 一瞬でのことやったんやと思いたいけど、傍に居てなかったからなぁ。
苦しかったんか?淋しかった?最期に何を思ったん?
まさかお母さんを孤独死させるとはなー。情けない。 なんだかんだ言うても、まだ56歳やったやん。若いやん。 もっと頑張ってくれると思ってたんやけど。こればっかりは、なぁ…。
先月くれた手紙で、めずらしく何か悩んで落ち込んでるみたいやったから ≪人生に遅すぎることはないらしいよ。 生きてさえいればさ、今からでもなんとでもなるよ、うん。≫ って返事書いたやろ、私。ちゃんと読んだん?生きてなあかんやん。
斎場で出てきたのを見たとき、ちょっとショックやったで。 あんなにプヨプヨ肉付いてたくせに、あんなにスカスカの骨だけになってさ。
それにしても、こんな時期に死ぬなよなー。 世の中どこを見ても母の日、母の日で、ツライやんか。
お母さんと電話した日のことは全部、手帳に書いてるねん。 最近は≪元気そうな声だった≫とかさ、そんな記録が多かったのに。 お母さんの友達も、近所の人も、言うてたよ。 「元気にしてはったのに」とか「よく笑うようになったのに」って。 なんやねん。ぜんぜんあかんやん。
いちばん最近くれた電話なんかさぁ、ほら、5/4の朝よ。 「あんたから貰った湯呑みが割れた〜。なんかあったら連絡して〜」 って留守電聞いたから、私の身が危ないんかってビクビクしてたわ。 お母さんの方やん!なんかあったんは。
その後すぐ届いた手紙に書いてたやん。 ≪サンセットなんとかの『マイペース』って曲が好き。 ラジオで流れるの、楽しみにしてるの≫って。 だから、プロモーションビデオが出てるんやったら見せてあげよう と思ってさ、DVDプレーヤーの検索してた記録が残ってたんよ。 私の、お気に入りに。それ見たらなんか泣けてきたわ。 ちなみに、サンセットスウィッシュやで。そのグループ名。
お気に入りなんて言うても、お母さんには何のことか解らんよなぁ。 私、「インターネットできるようにしてあげる」って言ったのに 結局まだパソコン買ってあげてないままやもん。
「携帯電話が欲しい」ってお母さんが言ってたのも、 そのうち買ってあげようと思ってるうちにそのままになってて…。 ケータイぐらい、すぐ買ってあげたらよかったのになぁ。 毎日電話っていうのは正直ちょっと難しいけど、 ケータイがあったら、毎日メールぐらいはしてたかもしらんのに。 お母さん、筆まめやし。きっと毎日メールくれるようになってたと思うわ。
そしたらさ、「あれ?今日はメール来ないな」ってなってさ、 もっと早く発見して、間に合ったかもしれないのかなぁ。
今日までには二回、大泣きしたわ。
一回目は発見した日の夜に。 ケータイの話みたいな「○○したらよかった」「○○すればよかった」 ってタラレバの後悔ばっかりがいっぱい押し寄せてきてさぁ。 今さらそんなこと考えてもしょーがないって判ってても、やっぱりな。
二回目は次の日の夜に。 少し寝て起きたら、白い布に包まれたあんたのお骨が視界に入ったんよ。 「お母さんが、いなくなっちゃった…」 って感覚が急に襲ってきてさぁ。びっくりした。
≪喪失感≫っていう言葉の意味はコレかー!って感じやった。 こんなにショックを受けるとは、正直思ってなかったわ。 ≪胸にぽっかり穴が開く≫っていう言葉も、すごいよな。 ほんまに胸の辺りがえぐれたような感覚やったもん。
現実やったんやなぁ。 私らが、親子やったのも。お母さんが、死んだのも。
お母さんの日記帳みたいなん見たけど、私の日記帳と一緒やったわ。 お互いに憎んだり、愛したりしてたわ。 なんか結局、最後までちゃんと分かり合われへんままのところも多かったし それは残念やったけど、だって違う人間やもんな。そういうことにしとこ。 それでもあんたは私のお母さんやし、私はあんたの子供やから。紛れもなく。
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