覆面作家企画6 Bブロックの感想です。
B01 異端審問官と異端の聖女
教皇の暗殺未遂、最初犯人=ユスティティア=男装と連想してたんですが、読み進めて行くうちに二転も三転もひっくり返って、最後はウルトラEが見事炸裂、最後のオチにうわあああっ、となった次第でございます。全ての元凶はおまえか! という……
腹黒&節操無しの教皇にハリセンぶちかましたい気分。そして教皇に狂わされた被害者その1=オールドウの苦労が読んでてすぐ目に浮かびます。
彼、老けこむの早い気がするなぁ、なんて余計な心配もしてしまいましたが(汗)
B02 誰か
最後、火だるまになったのは「彼女」か老人か。その前に老婆は何を抱えて逃げたのか、謎が深まる結末でした。細かく突き詰めれば重く沈んでいく物語ですが、少年の純粋な語り口がその重さを軽減してくれたような気がします。
随所にちりばめられた彼女への想いと命を削る描写がとても印象的でした。
B03 <激情>の魔女
最初「ヒヒヒ」なんて笑いをするから低い声のおばあちゃん魔女を想像したのですが、小娘魔女ですか。ツンデレ魔女さん可愛いなぁ。
一見魔女が手綱を引いているように見えますが、実質はイルにぞっこんじゃないか、とも思える展開にこっちがにやにやしてしまいます。
魔女にとっての十年は暇を持て余す程度のものかもしれないですが、イルにとっての十年は長かったのかもしれませんね。
とにもかくもお幸せに。
B04 サンシャーラ
話を要約すると目の前にあるのはユーリの遺体であって、シーラはその前に既に死亡していたということ?
つまりユーリは、シーラの死を認めたくなかった、あるいは自分の葬儀のひどさに「これは私の葬儀じゃないもん、妹のだもん(激おこぷんぷん)」とすりかえた、ということなのかな?
死者と遺品を全て聖地へ持って行き、遺族に何も残さないという掟といい、サンシャーラの正体といい、設定がかなり詳細なので、同じ世界観の物語が他にも沢山出てきそうな、そんな気配がします。
そしてユーリーに絡んできた少年の台詞や言葉選びがさりげなく色っぽかった。あんなので口説かれたらたまりません。
B05 人類に炎を取り戻してくれたペンギンのお話
ペンギンが。ヤンスが。ぶほっ(鼻血)これは萌え殺しですか?
童話調ではじまる物語。ゲオルグはとても優しくてお人よし。愛嬌のあるウィリーは努力家で頑張り屋だと思います。お互いいい味を出していて、ボケとツッコミも絶妙。
ここまでくると一人と一羽の出会いは運命としか言いようがないです。めでたしめでたしのあとはコンビ組んで是非舞台でコントを!
とっても楽しいお話でした。
B06 闇盗人
>君をここから解放してあげるよ、お姫さま。
この口説き文句は罪ですね。けしからん、実にけしからん(褒め言葉です)
巫女を手に入れる一方で、商人の過去が童話調に描かれる、現代と、過去が入り組んだ物語に壮大さと濃厚さを感じました。
闇の中から抜けでたあと、アーニャがどうなったのか気になります。幸せであるといいんですけど……
B07 魔法使いの弟子と赤の受難
蛙にされたユリが可愛らしかったです。捕食されない様に懸命に跳ねている姿を想像したら顔がにまにましてきました。
お師匠さんもフリーダムですねぇ。実験は私もすきですが、やりすぎはよくないですよね。弟子を蛙にしててへぺろ、もう一人の弟子にあとはよろしくって、結構えげつない気がします。
とにもかくも、ユリが元に戻ってよかった〜
B08 クルーム・ルージュは屍に帰す
最初ミステリの臭いがしたので心してかかりました。――が、蓋を開けたらなんて美しき兄弟愛。ハッピーエンドなのもよかったです。
ユリアスは過去の過ちを謝りたくて片っぱしから屍炎師を訪ねていたのですね。そんな弟を赦したルージュの心の広さにもじんときました。
兄弟という形が崩れ、身分もかけ離れてしまったけど、お互いがお互いを思って生きている姿が素敵だなと思いました。
B09 狐の嫁入り
記憶喪失の女の子を預かったらフォーリンラブ、これだけならほのぼのなんですが、意外なオチが待っていたという、そんなお話。
炎の中に飛び込んだ太吉さんも素敵だけど、何よりも、お紺を育てた盗賊のお父っつあんが素敵だなと思いました。
彼女の将来を案じて突き放す――この親子愛を想像したらうるっときてしまいます。
お紺はいずれ太吉に本当のことを話す時が来るのかな? 来るとしたらそれは是非稲荷神社の前でやってもらいたいなぁ……
B10 Kindling !
【飲んだくれ】【鳥のホネ】【暴れ屋】のあだ名に強盗ネタ。ベタな西部劇と思ったら一味違いましたね。
私も最初は「ええっ、あれはハゲじゃないの?」って思いましたよ。ザビエルのようにぱあああっとした感じのを想像してしまいました。
特殊能力を持つエリュは何者なのでしょう? 農夫のおじさんに「悪魔」と言わせ震えあがらせる存在というのも興味深い。
旅の途中なようなのでこれも是非続きがあったら読んでみたいですね。
B11 夜の灯しびと
天蓋孤独のメイとおじさんの心温まる話。街灯に火を入れる職業なんて、なんて素敵、と思いながら読んでいました。
おじさんやママ、マスターの語り口がいいですね。おじさんはちゃんとメイの本心をちゃんと汲みとった上で言葉を発している、その優しさがこちらにもじわりと伝わってきます。
自分を夜だと称するメイにとってママやマスターはホームであり、おじさんは心をあっためてくれる、道しるべの灯なのでしょうね。
そう考えるとメイはとても幸せ者だなぁと思いました。
B12 キタキタ
PC使えるのがこの時間帯しかないとはいえ、深夜にこれを読んだことを後悔しました。怖い、怖すぎる。
何が怖いかというと、得体のしれないモノ、見えないモノ、こっそり仕込まれた呪いのループ。
誰かに語ることで死を免れるという設定は「リング」っぽいですが、それでも怖い……この連鎖はいつまで続くのでしょうか? トイレに行くのが億劫になってしまいます。