ようやくここまで来た〜
ラスト、Eブロックの感想です。
Aブロック並に読み返し率高かったのは私の理解力が足りなかったせいか?
とにもかくも、個性的な作品が揃ったブロックでした。
あくまで個人的主観。短いですが感想です。(※注は読後感に注意の略)
E01 コロンナ33遅き午餐
師弟との再会が温かいですね。エラスという遊牧民のような生活、コロンナといった世界とその歴史が流れるような文章とともにすっとはいってきます。
拝読中は師匠さんの心の広さと深さに頭が下がりっぱなしでした。こんな素敵な人を師に持つお姫さま(正確には女王さま)が羨ましいです。
そして自分の失敗を反面教師にして這いあがった姫さまの強さ。だからこそ最後の展開に「え?」となりました。もう一度注意深く読んで父王のくだりで止まって「ああ、そうか」と納得したのですが……姫さまもまた真の道を進むということなんでしょうね。
優しくもやるせなさを残す作品でした。
E02 サクラ散る
すごいほのぼのだ。ラブラブじゃん。なのにこのタイトルはどういうことだろうって思ったらそういうオチだったんですね。前半の「私」と「あなた」の恋の駆け引きがもう微笑ましくて。顔がにやにやっとしてただけに、この展開は切ないなぁ。物語が終わりに近づくにつれてもう悲しくて悲しくて。「あなた」の気遣いと「私」のけなげな言葉にじんわりきてしまいました。
できることなら「あなた」の未来に幸せを。それが何よりの望みなのだと思います。
蛇足ですが、妙に浮いていた「河原万歳」は私にはものすごいツボでしばし笑っておりました。
E03 Down Your Way
とても気になるのはカン曹長。一体何をしでかしたんでしょう?私の中ではまだ理解できてない部分もあります。ムィムーとシーヤの死も件に絡んでいるのかな? 隊長の思惑で二人が罪を着せられて、それを知った曹長が隊長に報復をしたのかなぁ、と深読みしてみたりしてるんですが。だとしたら「他人」の為に罪を犯したという一文も納得いくというか。
間違っていたらすみません。背後関係が私のなかで上手く咀嚼できてないです。
「?」がいっぱいありましたが、レージの一貫したドMぶりににやにやしてました。
E04 地球全周1/40000000と少しの世界 ※注
結びの言葉に「??」となって読み返し。ああ、冒頭のなぞなぞの答えかあ……と妙に感心してしまいました。妄想バリアというか、フィールド全開ですね。読みながら自分の過去を遠い目で見つめてしまいました(笑)
ええ、少なからず現実逃避というか「こうなったらいいのに」という思いはありましたね。でも上手くいくわけねえ〜「考える前に自分で動けよ」という結論に達しましたけど。
二転三転とひっくり返される物語、現実か妄想かに振り回されました。って、家から一歩も出てないじゃん。だから一メートルの世界ということか。
とても共感するというか(過去が)身につまされるお話でした。
E05 夏椿の咲く庭で
主人公は私の中で狸さんだったんですけど……どうでしょう? 日本昔話のような雰囲気を思わせる文章、夏椿の描写も素敵で読みながら「ほう」とため息をついてしまいました。物語の背景がするするとはいって、あっというまに読了。お坊さん、いい人だな〜と思っていたら私も騙されてしまいました。というか主人公、分かってて語っているのかい?
落語を聞いている語り口がなかなか粋です。読後も清々しいものでした。
E06 ただいまセルフィ
別ブロックにもあった恋は盲目シリーズ(笑)こちらはSF調ですね。そうか。IT技術が向上すると、この手のストーキングができちゃうわけですね。同期化していくAIというのがとても興味深かったです。オリジナルとの隔たりは限りなく近くに持って行けるけど、決して零になることはない。この何千分の一が「個」を繋ぎとめているという考え方が面白いです。
主人公にとってセルフィは家族そのものになっていますよね。だから自分の憎しみを与えたくないと思いつつ、自分の辛さを分からないのが憎くてたまらない。あの一瞬に芽生えた殺意を彼女は一生忘れることはないんだろうな。
今度は情報に頼らない恋ができることを祈ります。
E07 花想
何度も読み返してしまったのは、どれが誰の台詞だったのかが分からなくて混乱していたせいだと思います。気をとりなおして感想を……人ならざるものと、人間子供の交流のお話。というか彼は恋をしてしまったんですね。しかも「紫桜」なんて素敵な名前を付けるなんて。センスのいい〜二人のやりとりがとても微笑ましくてたまりませんでした。
それを考えれば、これもハッピーエンドなんでしょうね。定良が嬉しそうな顔をしている姿が目に浮かびます。
E08 人生に乾杯!
読みながら「人生に乾杯しよう〜♪」の歌がぐるぐると回っていた私です。ちょっと昔の時代を思わせるようなシュチュエーションですよね。花屋に通いつめる主人公がいじらしいです。花屋のお姉さんは天然なのか? こう毎日くるなら気づいてあげなさいよ〜とツッコんでいたら返事の言葉のなんと洒落たことでしょう。
二人を添える花言葉たちも素敵です。お二人さん、どうぞ幸せに。
E09 回収者 ※注
ごめんなさい。全てを理解するのは難しかったです。
それでも<電波チラシ><再生ロッカー><床屋>という言葉(隠語?)が独特の世界観を醸し出していて<聖母>を求める回収者たちの執念を感じました。物語の世界は地層の如く厚くて奥が深い。重厚な文章にただ圧倒されました。
そして<肉挽き箱>のあたりで工場の機械で作られていく加工食品の姿がかぶってしまったのは私だけだと思います。
E10 見返り坂道具店 ※注
序盤からなぁんか嫌な予感はしてたんですよ。「逆らうととんでもない対価を払わされることになるだろう」って、明かにバッドエンドじゃないですかっ(笑)おそるおそるな感じで読み進めてみたのですが店主は確かに優しい。でもその優しさが怖すぎる。そして、それ以上に怖かったのはノゾミというか、そういう欲に囚われてしまった人間なんだろうな、としみじみ思ってしまいました。
他力本願というのもほどほどがいい。人生見切りをつけるのも大事です、ということで。
E11 幸せの道
リゼロは不運だったとしか言いようがありません。希望をもって王都に向かったのに、与えられた仕事は新兵器の開発。それが乱用されたら逃げたくもなりますよね。セロンとの再会の展開は王道だなと思いつつも、二人の行く先がどうなるのか最後まで目が離せませんでした。
なので二人の子供が登場したときは安堵。というか、それを導いた隊長に惚れました(笑)私は貴方についていきたい!
とても素敵なお話でした。
E12 世界ノ果テノソノ向コウ
このブロックはSFものが多い? と思いつつ。主人公の渋い台詞やドォルさんたちの活躍に見惚れておりました。世界観が確立していて読みやすかったです。惜しいと思ったのはジャランが何故「世界の果て」に興味を持ったか、ということでしょうか? 追われる理由も明確ではなかったので、ジャランに共感したくても何かが足りなかった、そんな気がします。
とはいえ、彼らがたどりついた「世界の果て」はとても美しく描かれておりました。最後の演出がちょっとだけ憎いです。あ、何だかこっちもしょっぱくなってきた……(笑)