虚貌。
何となく買った「ダヴィンチ」で雫井脩介氏を知り、図書館で借りた本です。
率直に、話の展開が面白い。
一気に読み上げました。
人物と、それを取り巻く背景が絶妙に描かれています。
そういう場合、どうしても文が長くなりがちですが、これはほどよい長さで描かれて、途中で視点が変わっても読むのに苦になりません。
多少ご都合が入っている気もしましたが、それも鼻につくわけではなく、むしろ後半に進むにつれ、登場人物にツッコミを入れては笑っていました(本当はシリアスなんですけど)
某犯人の一人が恋人の親に会う時なんて。
「うわ。馬鹿だなぁ、そこで会っちゃっていいの?」
思わず声にしてしまって……
いやー、本読んでてこんなことって初めてだな。
人前で読んでなくてよかった、やってたら不気味です。
内容は二十一年前の殺人放火事件から始まる復讐劇、と言った方がいいのでしょうか?
舞台が毎年行っている岐阜なだけに、地名にも親近感が沸くし、読んでいてその場の空気が伝わってくる感じでした。
復讐した犯人、については謎が多少残るのですが、それでもドラマチックというか、佳境のオチにはやられた。
すでにあの人かな、と想像はしていたのに。
なのに登場の仕方が……
「ちょっと待った! ねぇ、そういうことかいっ!」
と、思わず叫んでしまいました。私は。
難を言うとすれば、登場人物死にすぎです。きっと死ななくても物語は進んでいただろうと思える人が二人(か三人)いたのに……
とにもかくも、雫井氏は読者が組み立てた推理を途中で壊していくツボを得ているような気がします。
是非、他の作品も読んでみたいですね。
2007年09月25日(火)
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