恐ろしい事が起こりました。
あまりにも恐ろしかったのでちょっと小説調に書いてみました。
それは朝、お風呂掃除ついでに浴槽のふたをベランダに干そうとした時のこと。
雨上がりの湿った空気。まだどんよりとしていた雲を眺めながら、今日やるべき事を考えていた和。
「さーて、ちゃっちゃと洗濯物干して掃除して。今日発売の本を買いにいかなくちゃなぁ」
はやる気持ちをおさえながら浴槽のふたを立てかけたところで和はふと、ベランダの柵に視線を落とす。慣れない朱茶色に気づく。
「?何だ?この・・・」
細長いのは、と思う前に「うわっ」と唇が先に動いてしまった。体長2〜3センチの「彼ら」は和に気づかれても自分の時間を保つようにゆっくりと壁を昇ったり降りたり。たくさんある足を使って実に優雅な動きをするではないか。和の体が固まった。
そういえば。先日、家のトイレに彼がいたと相方が言っていた。彼がどこからやってきたのかその時分からなかったが。そうか。マットを干した時に一緒についてきてしまったのかもしれない。
そりゃあね。田舎の実家はこれより大きいのを何度か見たことはあるし。相方のお父さんの実家なんか、カメさん(カメムシ)が家の中に住んでるから。まぁ免疫はあるわ。まだナメクジとか、小バエ程度ならいい。けど。この毛虫というか、ムカデ?そんなもんが何で住宅街に現れるかなぁ?
げっ。ベランダをよくよく見渡してみると壁はおろか、角の隅っこ、天上にも彼らはいるではないか。
なんなんだ?なんなんだコイツらわぁああぁ。
体の奥からわき起こるむずかゆさ。思わず身震いをする和であったが、すぐにこのままではいけないと我に返る。
相方は今家にいない。でも梅雨時期の今、洗濯物は晴れ間がのぞいた時に外に干しておきたいのも事実。
和は腹をくくった。家の中に戻り、殺虫剤と新聞紙、そして脚立と掃除用具を揃えるときゅっと唇をむすんだ。
これは戦いだ。私と、そして彼らの。
和はベランダに力強い足取りで入り込む。まずは最初に発見した壁に殺虫剤を吹き付けた。
シュッ。白い霧状の液体が彼らを取り囲む。彼らは身悶えた。数秒間の痙攣の後、彼らの体はダンゴムシのように丸まって、そして床に落ちた。念のため割り箸の先で体を恐る恐る突いてみる。
反応はない・・・ようだ。
和は細く息を吐くとその骸(むくろ)を割り箸でつまみ、レジ袋に放り込んだ。それを何度か繰り返し、ついでにベランダに舞い込んだ土や埃をほうきで掃いた。
・・・よし。これで大丈夫。
まだまだやることはあるのに何だかどっと疲れが出てしまった。まぁいい。彼らに怯えた生活をするよりかはずっといい。これで快適な生活が送れる!
「さあって掃除。掃除ぃ」
ちょっと時間はかかったけど。ちゃっちゃと済ませて本屋。本屋ぁ。
すっかり安心しきった和。だがそれが単なる序章に過ぎなかった。
和は脚立を家の中にある定位置に戻す。そこは掃除用具入れの脇で、近くには手前に引くタイプの窓がある。と、脚立を立てかけた所で和は信じがたい物を目の当たりにした。
あれ?確か君。前にも会ったことあるよね?
窓のさんのあたりで、和は心の中で問いかける。うん、そうだね。と返事が返ってきたような気がした。
まさかね。まさかね。そんなことないよね?
和の胸の鼓動が高鳴る。見ちゃいけないと思いつつ、窓を開けてみる。
するとそこには・・・・
「うわぁぁぁぁぁぁぁっつ!!!」
・・・・あとはご想像にお任せします。