漠然とした不安と重圧。 家族も、会社も、何一つ辛い事がないのに、 暗い気分だ。
あの日の夜、彼女は「死んでやる!死んでやる!」 と叫んでいた。それはもう常軌を逸していた。
自分は自分で、「それでも別れる」と 言った。
その時点で、僕は予想していた。 彼女は自殺する、と。
十数年前のことなのに 全然失せる事のない記憶。
ばかやろー、失恋なんかで死ぬな!
自分だけが斎場の入り口で 入場を断られ、そのため彼女の 死に顔を見ていない。
いつも笑っていた彼女と 死んでしまった彼女。
その中間点が、死の儀式であり 死に顔であり、焼香であり・・・ それら全てに立ち会えなかった自分。
僕の中では、彼女は生き生きと 笑っている。彼女の「死」が 現実感のないまま時が経つ。
こんな切ない日は、どうやって 時間をやり過ごそうか。
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