| からっぽ。 |
また随分書いてなかったな。
ちゃんと書かなきゃっておもうのに、 現実と向き合うことが苦しくてどうしても書けなかった。
瞬間の気持ちは、もう随分と腐っちゃったね。
一昨日、勇輝と別れました。
もう、そうするしかなかった。 限界だった。
あたしも、それからたぶん、彼も。
きっぱり言われたの。 なんの望みも残らないほど、はっきり言われた。 あたしは条件反射みたいに返して。 それで別れた。
お兄ちゃんのお家にいたから泣けもしなくて。 平然とした顔で、頭は真っ白だった。
なんかね、なんだろう。
すごいほっとしたの。正直いうと。 やっと終わったんだ、心からそうおもった。 清々したとは違うのよ。
ずっと張り詰めてたものが、やっと切れたみたいな。 安心したのかもしれないね。
もう怖がる必要なんてなくなって。
6月18日。すごい雨の強い真夜中。
17日の夕方に、岐阜から3日ぶりに帰ってきた彼。 顔を合わせてもあたしはどうしても無視しかできなかった。 目すら見ることができなかった。
だってあたし、3日間ずっと待ってたのよ。 彼からの電話を。
彼が行く前にね、メモを残しておいたの。
『まだ気持ちがほんの少しでもあるなら、 1分でぃぃもからお休みの間に連絡がほしい』って。
もしも電話くれたらね、ただ一言だけ、 「18日を迎える夜は一緒にいてね」ってそれだけ言うつもりだった。
それでまたがんばりたいっておもった。 彼がまだあたしを棄てないでいてくれるのなら、って。
みせてほしかったの。ただ、気持ちを。
だけどやっぱり電話はこなくて。 あたしには、それが決定的のように感じた。
3日間の無言が、もう彼の気持ちのなさだってそうおもった。 ・・・でもそれも勝手な思い込みだったのかな。
久々に会って「メモみた?」「うん」「・・・そっか」って。 それで終わらせちゃった。 「どうして連絡してくれなかったの?」って聞けば良かったのに。
後で聞いたの。友達に。
「3日間、ぜんぶと離れてそれでちゃんと考えたい」って、 行く前に彼はそのコにそう話してたんだって。
考えたくても、ちぃがいないときすらも、 お仕事で大ちゃんとかと顔合わせてていろいろ聞かれて。 だからちゃんと考える余裕なかったって。
あたし、そんなの知らなかったよ。 もう気持ちは欠片もないんだとおもった。
もう何度も何度もね、 「別れようとはおもわないの?」ってあたし聞いてたの。 でも彼はいつも「おもわない」って言うばっかりで。
その日もそうだった。
つまりそれが彼の出した答えだったのに。
それでも、気付かずにあたしは彼を殺した。
彼の心を。
彼が自分から、病気の診断結果も話してくれたのに。 あたしにちゃんと打ち明けてもくれたのに。
それなのにあたしはもうなにも信じられなかった。
吐き出したあたしの言葉を聞いて、 彼は「じゃぁもぉ無理じゃん」なんて聞いたことない声で。
あぁ。
殺したかもしれない、
瞬間あたしおもったんだ。
すぐに後悔ばかりが襲ってきた。
あたしはまた自分の苦しさを押し付けて、 自分の苦しみばっかりわかってもらいたがってたんだ。
「今、答えがでた。無理だね」って彼が。
あたし何故か涙すらほとんど出なくて。 彼はおかしいくらいタバコばっかり吸ってて。 外は真っ暗でどしゃ降りで。
なに話したかなんてほとんど覚えてない。
今も思い出せない。 もしかしたらあたしは、なにも聞いてなかったのかもね。
ただ、彼のアイデンティティーに傷をつけるような、 あたしの好きだとおもった彼の部分すらも貶すような言葉を、 あたしはただただ冷酷に吐き出したのよ。
まるでふたりを嘲笑するかのような態度でね。最低だった。
「俺、どうしようもなくなるくらい
人を好きになったことなんてないよ」
「それはあたしも?」
「そうだね。違うね」
その言葉だけが頭の中でぐるぐるエコーみたいで。
あたしは、なにを信じてきたのかな。 彼の言葉を真に受けてたただのバカだったの?
なんだろう。ほんとにただ笑うしかなかった。
「今までぜんぶ嘘でした」それと同じ? なにがなんだかわかんなくなった。
でも、自分で仕向けた結果なはずなのに、 やっぱりあたしは彼のことを手放せなくて。 そこまで言われたのに、自分もわかんないくせに。
彼の手を一度離せば、
もう二度と掴むことはできないような気がしたから。
「別れたくない」なんて縋りついちゃった。 みっともないね。いちばんしたくなかったことなのに。 でも、それでも繋ぎ留めておきたかった。
自分勝手。
「・・・わかった。じゃぁ俺はどうすればぃぃわけ?」
「きみはきみの思う通りにすればぃぃんじゃない」
めちゃくちゃ。 彼はなにを承諾してるのかもわかんないまま。 自分でもなに言ってるのかわかんないまま。
「みんな白々しいんだよ。大ちゃんとか」
最後の最後であたしは大きな過ちにやっと気付いたよ。 もう、遅いのは重々承知だけど。
少し雨が小ぶりになって。 彼は「歩いて帰る」って真夜中の闇に溶けていった。 ケガしてた左足を庇いながら、殺された心を抱いたままで。
あたし、彼がいなくなって、泣いて、息ができなくなって。 もうなにも考えてられなくて、でも頼る人もいなくて。
あたしのこといつも変わりなく想ってくれるマキに 咄嗟に、喋れもしないくせに電話をかけて。
嗚咽だけのあたしにマキは優しく「落ち着いて」って。 「今から行くから。どこにいるの」って。 マキの隣のしょーたさんの声も聞こえてきて、でも喋れなくて。
あたしはなにを言ったか覚えてないけど、 でも後からマキに聞いたのは「ごめんね、大丈夫」ってずっと。 それしか言わなかったよ、って。 居場所すら言わずにそれだけ繰り返してたって。
あとはホントになんにも覚えてない。
ずーっとひとりでいて、朝方帰ってベットで丸まってた。 眠ることすら出来なくてただ泣くばっかりだった。
なんにも考えてなんてなかったよ。
そのくせ、一生記憶に残るお誕生日になっちゃった。
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2006年07月03日(月)
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