新知庵亭日乗
荷風翁に倣い日々の想いを正直に・・・

2002年09月14日(土) 白髪画伯



自閉症のShinchanは5才になっても言葉がでませんでした、困ったお父さんとお母さんは病院を訪ねたり、大学の偉い先生に相談しました。
 ピアノを弾くとよい、犬と一緒に暮らすとよい、などアドバイスを受けました。
「ボン!ピアノ買うたろか?」「・・・・」
狭いおうちでしたが、Shinchanのところにアップライトピアノが、運ばれました、お兄さん達がうんしょ、うんしょと声を出して重そうにピアノを抱えていましたが、Shinchanには、ピアノが声を出して、象さんのように歩いてきたように見えたのです。
 ピアノって音を出すけどかわいそう、だって白と黒しかないもん。
 ある日お父さんは白髪さんというへんな絵書きのおじさんと一緒に酔っ払って帰ってきました
「ボン、すごいなー、これどないしたんや?」
お父さんは「な・なんやこれ!」
その時のピアノは赤青黄色、弾くところも同じで、お父さんの油絵の具を塗りたくっていたのです。
 「ボン大変やったナー、そーか足で描いたんか、偉いぞー」
Shinchanは白髪のおじさんが大好きです、やっと歩けるようになった頃、お父さんの勤める小学校の体育館で、ターザンになった白髪おじさんが、大きな大きな白い紙に絵を足で描いてました。
「ボン、はだかなってでんぐり返りしーや」
ゴロン、ペチャペェチャ、コロンコロン
その時Shinchanは初めて声に出して笑ったそうです。でもお母さんは、お庭で水道の水をホースでShinchanにかけて洗おうとするのですが、油絵の具とペンキがついたShinchanはたくさんの日にちがたっても、なかなか元のようには戻りませんでした。

「ボン、この音は何色?」「あーか」「これは?」「あーかとしーろのいっしょ」
そのうちShinchanはピアノの弾くところに絵の具をつけて、同じ音の色を探して、よく似た音にはしーろを混ぜて塗りました」
Shinchanはあいかわらず足でピアノを弾くのでした。



■白髪一雄
画家。床に広げたキャンバスの上に立ち、天井からつるしたロープにつかまりながら縦横無尽に足で描く「フットペインティング」など、独自の手法を編み出し、国際的に高い評価を得ている。尼崎市民芸術賞、兵庫県文化賞、文部大臣文化功労者表彰ほか受賞多数。元尼崎市教育委員。尼崎市宮内町在住。


白髪先生



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