Seakの日記
日々感じたことを書き留めていこうと思っています。

2004年05月24日(月) 腕立て伏せ

2年くらい前まで、卒論なんてやつのせいで帰るのが遅くなる前までは、僕は、毎日腕立て伏せをやっていました。僕は元々からだが強い方ではないし、顔色も青白い典型的なインドアタイプなのですが、だからこそ、少しでも体を動かそうと思ったのです。中学2年の頃からずっと続けている腕立て伏せが、密かに自分の中では誇りでした。しかし、それも卒論まで。卒論に追われるようになってから、まったくやらなくなってしまいました。時間的な余裕よりも、精神的な余裕がなくなったことの方が大きいですね。毎日がつまらなくて、絶望的になってしまいましたから。その理由はいろいろありますが、やはり、刺激を受けなくなったことが一番大きなことでしょうか。講義を受けたり、友達と話したり、たまには彼女と話す機会があったりして、3年生の頃まではいろいろと刺激があったものです。時間がたてば忘れると思いましたが、時が経てば経つほど、彼女のことは理想化されて、脳裏をよぎります。きっと、本当の彼女が僕の頭の中の彼女の姿を知ったら、私はそんなんじゃないと言って怒るのでしょうね。僕の中の彼女は、よく知らない人と知っている人に対する態度の差がとても大きい。知らない人には丁寧に応対するのに、知っている人には遠慮なく愚痴を言ったり文句を言ったりしている。誰よりも努力家で、でもそれは、自分の弱さを知っているからで…。優秀でそつがないけど、決して天才ではない人。自分が不器用であることを知っていて、必死にそれを隠そうとしている。心のどこかに壁を作っていて、壁の横から顔をのぞかせることがあっても、決して壁を越えて近づいては来ない人。思いは募り、昇華して、…そしてきっと、すでに違う形に変わっています。

腕がとても重く感じます。昔は100回くらいは腕立て伏せができたのに、今は60回でもこんな調子です。きっと、明日かあさってには筋肉痛で苦しむことでしょう。

幸せとは何でしょう。満足できるとはどういうことなのでしょう。彼女に思いをはせるだけで満ち足りた気分になれる僕は、頭はよくないけど幸せな人間なのでしょう。考えていてふと思ったことは、幸せというのは、その日一日を、胸を張って、主張できることなのではないかということです。僕も前までは、毎日のできごとを日記に記していました。他の人から見れば下らない生活でも、僕にとってはきっと、充実した毎日だったのでしょう。そしてそれは、文章には現れない、人との交流にその実体があったのだと思います。僕は小さな頃から今まで、ずっと友人に恵まれてきました。だからこそ、幸せと言い切れる生活を送ってこられたのだと思います。…今は、違います。友人がいなくなってしまったわけではありませんが、日常的に会う機会は、もはやありません。会おうと思えば会えますが、それは、毎日、ごく当たり前のように顔を合わせる生活とは違うものです。

だからこそ、今の生活に慣れてきても空虚な感じを受けるのだと思います。そして、人との交流を重視した、ラグナロクというゲームに心を奪われるのだとも思います。ゲームとして見れば決して良いものではないのにも関わらず、です。表面的には確かに優れたソフトウェアなのですが、ゲームとしてのバランス調整があまりに稚拙すぎます。しかし、もはやそんなものはどうでもいい。むしろ、そういうバランスに対する議論をすることがまた、人との交流を生み出しているとも言えるのです。

実生活で失ってしまった、もっとも大事な心の欠片。人と交わること、人を知ること、人を尊敬すること、人に好かれること、人に興味を持たれること。多くの人にとって、もっとも大事と言えるこんなことを、インターネットのゲームで補っている今の状態は、異常なのかも知れません。しかし、単なる受け売りではありますが、人は、そして僕は、好むと好まざるとに関わらず、与えられた環境の中で選び取っていかなければならないのです。それがすべてであり、他にはありません。現代の環境はとても選択肢が多いために無限のように感じますが、現実的な選択は、それほど多くはないのです。そして、自分の選んだ道は最善であると信じること、あるいは信じられること。それが幸せの、一つの形なのではないかと思うのです。

僕は今まで、何の迷いもなく進んできました。自分は幸せであり、自分の選んだ道に間違いはないと確信していました。しかし今、僕はとまどっています。明らかに道を間違ってしまっている。心を保つすべはあるものの、自分を前に進めるものは何もない。今をしのぐことはできても、未来を形作ることはできない。自分なりに生きていくために必要な、具体的で形のあるもの。形がなくても、確実に頼れるもの。お金や、もの、世の中で信頼を受けるに足る技術、経験。今、この時に手に入れているはずのものを、僕は何一つ手に入れていません。そして、手に入れられる見通しもまったくありません。

もう、ただ腕立て伏せをして満足するだけでは済まなくなっているのです。意味もなく体を鍛えるのではない。生きていくための目的を決め、手段を選び、そのための力を手に入れなければならないのです。すでにレールは外されて、僕は迷走しています。知ってはいたけど考えていなかった。そんな現実に今、向き合う必要があります。けれど、今の僕にそんな余裕はない。こぼれ落ちて崩れそうになる心の隙間を必死になって埋めているのに、一体何を考えればいいのか。難しいことではない。知っているから分かっている。僕は、決して難しい状況になど置かれていない。僕より困難な立場にいる人なんていくらでもいる。けど僕は、僕のなすべきことが、選ぶべき選択が分からない。今、するべきことをするだけ。大学院生なのだから、論文を書けばいいこと。本当にそれでいいのか?

もう、何も分かりません。当分の間は、1人で現実をさまよいながら、虚構の空間で多くの仲間に囲まれる生活が続くのでしょう。その間に僕は、僕なりの世界を構築して、その中に自分と現実の世界を位置づけなければなりません。現実の裏打ちがない人間など、決して認められることはないのですから。


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