2003.06.24 (Tue) 23:12:32
題名は、どっかの新聞のキャッチフレーズではない。最初に断っておく。
今日は妙にハイテンションだ。日記を書いていたら突然PCが落ちてちょっぴり悲しくなったが、そんなことにはへこたれないほどにハイテンションだ。
なぜかって、そりゃあ、久しぶりにバイトをして、働く喜びに満ちあふれている…わけがない。昔はバイトをしてても楽しいとか思ったものだが…。今だって楽しくないわけじゃないが、どうしても金をもらって働く、という意識が先に来る。それが自覚というものなのかも知れないが。ちなみに、上司は女性だった。ちょっと嬉しい。…僕も相変わらずバカだ。
まあ、それはそれとして、今日、気分がいいのは、例のごとく彼女に会ったからだ。
今日は昼からバイトがあるにもかかわらず、朝から大学に行った。10時について、12時頃には大学を出なければならないのだから、まともな調べものもできないし、大学に行く意味はほとんどない。なのになぜ行ったのかと言えば、それはもう、彼女に会いたかったということに尽きる。彼女は10時頃に大学に着くとか言っていたのだ。まあ、もちろん、そうやって時間を合わせたからって簡単に会えるなら、待ち合わせをしていたにもかかわらずすれ違うような悲劇のカップルもいないわけで…。
で、現実なんてこんなもんだ、なんてもう分かり切ったことを悟っていたら、そこに彼女が突如として現れた。文字通り、気づいたらいたのだ。エレベータを待っていた。で、エレベータが着いた瞬間にエレベータに背を向けていきなり部屋に向かって走り出し、そこから再び現れてエレベータに飛び乗った。そのエレベータを待っている間にあいさつをしただけなのだが、それで今日一日を幸せに過ごせるのだから…。
ちなみに、彼女が走っていったのは講師の待機室。実際の名称は知らないが、用途はそういう場所だ。その部屋の機能は、エアコンのコントロールとコピー。常に研究室にいる彼女が教室のエアコンなんて操作するわけはないので、十中八九、目的はコピーだろう。なんであれほど大きな研究室にコピー機がないのだろう、と思ってしまうが。それはそれとして、なんか彼女がコピーをやらされているということに少し怒りを感じた。なんか許せない気がした。同じ研究室にいる友人がコピーをしていたときは、大変そうではあったが、それは当然のことで疑念を挟む余地すらなかったのだが。いったいその友達と彼女の何が違うと言うのか…。まあ、何が違うって、僕にしてみれば大違いだが。
う〜ん、キーボードを叩く手が実に速い。ハイテンションなのもあるが、今日一日バイトをしていてずっと動いていたのが大きい。普段は研究室にいても何をしていても、ボーっとしていることが多いから、どうしても素早く動くという気分にならない。気分とか言う以前に、体がまったく動かない。
んで、彼女に会ったのが一瞬で、そのあと少し大学にいて、一日の半分以上はバイトをしていたはずだ。にもかかわらず、その一瞬の出来事にここまでのほとんどをついやしているあたりに、僕の心理状況が反映されているような気がする。
それはそれとして、仕事をやったわけだ。実はこのときに友達と会って、危うく遅刻するところだった。東京駅で一生懸命走ったら何とか間に合ったが。大学からは京葉線に乗るのだが、この京葉線の各駅停車というのはなかなか来ない。都心を走っている割に異常に本数が少ないのだ。
でもまあ、間に合ったのだから良しとしよう。5分ちょっと早く行ったのだが、なんかそのことを2,3回言われた。「ずいぶん早く来てくれた」みたいな感じで…。時間を守るということはあくまでも時間ぴったりに行くことであって、時間より早く行くことではないのかも知れない。これが企業社会とただの待ち合わせの違うところだ。企業の場合、約束の時間の前後に予定があるから、遅く行くことも許されないが、早く行くのも歓迎されにくい。今後は注意することにしよう。まあ、今回の場合は相手が部長だったから特に、だったのかも知れない。
で、企業と書いたが、僕がやっているのは、厳密にはバイトではない。相手はインターンだと思っているらしいが、僕はれっきとした派遣労働者だ。お前は大学生じゃないのか、といわれそうな気がするが、実は1997年から学生の派遣というのが解禁されているのだ。
派遣社員は厳しいというイメージがないだろうか?確かに、それは否定しない。しかしそれは、社会人から見た場合だ。派遣社員は、どうしても正社員に準ずる待遇になる。正社員と同等の待遇を期待することは極めて難しい。だが、それは考えようによっては、正社員と同等の待遇は期待できないが、正社員に近い待遇は期待できる、とも言える。これが何を意味するか。
社会人の派遣労働者なら、それは正社員に劣ると言うことを意味する。しかし、学生から見ればそれは違う。バイトよりも遙かにいい、ということを意味するのだ。たかが学生の分際にも関わらず、派遣労働者として正社員に準ずる待遇を与えられるのだ。仕事内容も、基本的には大差ない。時と場合によっては正社員と同じか、あるいはそれ以上の仕事をすることもある。詳しく聞いていないが、同じように派遣をやっている友人は、正社員よりも成績がよかったはずだ。
というわけで派遣社員というのは、学生から見た場合は極めていい仕事だ。もちろん、こんな卑近なことでなくても、学生のうちから社会に出て実際に経験を積むことはきわめて大きな意味を持つ。インターンでは単なる経験だが、派遣労働者は給料をもらっている以上、それこそただではすまされない。
派遣労働者にかかるコストは、1時間に3000円以上にはなるらしい。もちろん、僕の手元に来るのはこのうち1200円なわけだが。残りの1800円は様々な費用や派遣会社のピンハネになるわけだ。ピンハネと言って悪ければ、マージンと言えばいいだろうか。
んで、僕は派遣の仕事をやるのは一応初めてではないから、会社というのを少し冷静に見られた。独特の雰囲気は口では言い表せないものがある。うち解けてはいるが、それはそれとして仕事をやる、というような…。まあ、そういう雰囲気があるのだ。ニュアンスが全然違うが、言い表せないものを無理に表現しようとしてもやはりどうにもならない。
で、思ったのが、必要な人間とはどのような人間かということ。派遣会社からの連絡にもあったのだが、東大を出たエリートのような人間は、会社にはそれほど必要ない。なぜなら、今の時代、東大を出たエリートのような人が考えたことを実行に移すには、膨大な人の力がいる。人減らしの時代だとか言っているが、実際に現場を見れば、人の力がいかに偉大なのわかる。ITを導入するのはいい。では、ITを導入するとき、だれがビルを建てるんだ?そのPCを作るのはだれだ?まあ、この程度は指導者も考えるだろう。しかし、だれが配線をするんだ?どう配線をするんだ?という問題になってくると、もはや目が行き届かないに違いない。だが、このような問題も些細だが重要なのだ。配線が切れたらネットワークを接続できない。ネットワークを接続できなければ、ITを導入する意味が失われる。PCでデータを管理しても、それをFDに入れて持ち歩いているのでは、紙に印刷して渡すよりも面倒ではないか。
ITを導入するとなると、PCにはソフトをインストールしなければならない。その企業のシステムに合わせた環境設定もしなければならない。今回、僕が携わったのはそういう部署だ。このような状況で必要なのは何か?人をアッと言わせるような斬新なアイデア、ブレイクスルーか?ばかばかしい。そんなものは何の役にも立たない。そんなことを考えている暇があったら、たまった仕事を片づけなければならない。管理しているPCにナンバーを振って、Excelでリストにするのだ。そのリストをシリアルナンバーとつきあわせるのだ。プリンタにネットワークインタフェースを取り付けるのだ。ネットワークインタフェースをどう取り付けるか?そんなものは、ドライバでネジをねじってくっつけるに決まっている。専門用語をいくら並べてみたところで、実際の仕事はそうやって動いているのだ。
分かるだろうか?仕事なんてのはそういうものなのだ。かっこよく企画書を作り出して多くの人に認められる、なんていう人がいるわけだが、そんな人が裏では、PCが動かないと言って泣きついているわけだ。その人に、LANケーブルがささっていませんよ、と説明するのも仕事だ。企画書を印刷するプリンタを、食器用洗剤で磨くのも仕事なのだ。そういう仕事が嫌だとか言っているわけではない。世の中とはそういうものなのだ。
それを、ある程度分かってはいたが、本当に実感した。その、最初に書いた女性の上司が、僕にだけそんなことをやらせて自分はまったく違うことをしていたのであれば、ある程度疑念も抱いただろう。しかし、スカートをはいたまま必死になってでかいプリンタをひっくり返したりしていれば、やはりそういうものなのだということが分かるだろう。ちなみに、でかいプリンタをなぜひっくり返したりしたのかと言えば、それは、通気口にネジが引っかかったからだ。
ITソリューションがどうとか、そんなことを言う前にやることがあるんじゃないのか?そういう疑念が強くわき上がる。企業の経営者ではない。経営者は経営するのが仕事なのだから、そういうことを言うのが当たり前だ。それこそ、下っ端のことなど知らなくても、システム全体が動いていればそれでいいのだ。
やることがあるのは、学生だ。最先端の技術、知識に、当然のようについてくる企業批判。そりゃ、大学の先生様は、企業のシステムなんて未熟に思えるだろうよ。ああ、そうさ。みんながみんな、あなた方のように頭は良くないからな。だが、本当に理解しているのか?あなた方が言うよりも遙かに単純なシステムを運営することが、いかに難しいか。ITで統合とか言い出す前に、普通のサーバ・クライアントシステムを構築するのがどれほど難しいのか、考えたことはあるのか?頭でっかちなのは昔から言われていることだが、少々度が過ぎないか?気づいているか?学生はまったく気づいていないぞ。企業がなぜ、最新のシステムを導入しないのか。カネをケチっているだけではないのだ。そこには、膨大な人材資源が必要なのだ。
人材がカネで買えるか?否だ。今や最大の人材供給源となっている大学は、どこもかしこもエリート教育をしている。だれも彼もが経営者になるわけではないのだ。人の上に立つ術ばかりを教えてどうなる?それをマスターしたとしても、管理者になる頃には意味を失うぞ?時代は進化するのだから。
日本はエリートで満ちあふれてしまった。人を動かせる人間は多くいることだろう。システム構築の手順を知る者も多いだろう。では、実際に自分の手を汚して、PCの裏に潜ってケーブルをつないで、サーバルームで寒さに凍えながら作業をする人間がどれほどいると言うのだ?
もっとも、これは大学が大手を振っていることそのものが問題なのだが…。大学がそういう人材ばかりを輩出するのは、大学という組織がそもそも科学する組織なのだからこれは仕方のないことだ。工学系の大学ならいざ知らず、他の大学には科学を捨てて実用的な知識を、なんて期待できるはずもないし、そもそもそんなことはすべきでない。それは、大学の価値を失うことだ。
必要なのは、様々な知識を抱えた人間ではない。実際に動ける人間だ。文章を書ける人間だ。口が回る人間だ。情報を収集し、なんらかのアウトプットをしなければ意味がない。それも、論文のような抽象的なものではなく、動作するPCだとか、印刷できるように設定されたプリンタだとか、そういうものを作れなければ意味がないのではないか?そんなことはだれでもできる、と言う。だが、仕事のほとんどを占めるそういう作業を、だれがやるのか?だれでもできるのなら、学生はできなくてもいいのか?今や、日本人の半分は大学に行くと言うのに?
優れた知識、たぐいまれなカリスマ性、圧倒的なパフォーマンス。そんなものよりも、求められるのは透明人間である。最低限のコミュニケーションをこなし、必要な仕事をできる人間。カリスマ性なんて、100人に一人が持っていればそれでいいのだ。自分が100人に一人であると信じるなら、そうすればいい。だが、それ以外のすべての人間は、日々積み上がる仕事をこなしていくに過ぎないのだ。
2003.06.25 (Wed) 0:04:31