++ 記憶の中へ
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■ 8回目の誕生日 2004年07月21日(水)
 今朝10時、海渡の特殊学級の担任の先生から電話がありました。
 夏休みなのに何だろうと思っていると、海渡に代わってほしいということでした。

 海渡は神妙な顔をして受話器を耳にあてていましたが、しばらくして「はい。おかあさん」と受話器を私に手渡してくれました。私が代わると

「今日は、海渡くんのお誕生日ですから・・・」

 昨日の連絡帳にもお祝いメッセージが書いてありましたが、きっとどうしても当日、海渡に伝えてあげたいと思ってくださったのでしょう。海渡は学校の先生からの電話ということでちょっと緊張した顔で受話器を握っていましたが、いったいどんな言葉をかけてもらったのでしょう。
 1歳から通った保育園から数えて7年間、先生から誕生日のお祝いの電話をいただいたのは初めてのことでした。


 今日は、海渡の8回目の誕生日です。
 朝、まだ眠っている海渡に「おめでとう」と言いました。

 海渡が生まれたのも、今日と同じくらい暑い夏の早朝でした。
 幸せの中にいたのは1日だけで、翌日にはダウン症の告知がありました。
 その瞬間、映画のワンシーンのように、時間が止まりました。言葉を失った私たち夫婦に、若いドクターがゆっくりと言葉を選びながら、丁寧にダウン症について話してくれました。

 あの日から、8年が過ぎました。
 悲しいこと辛いこと、たくさんの涙、確かにあったはずだけれど、海渡の笑顔を見るとそれらはすべて夢のことのように思えます。なぜあんなに泣いたのだろう、なぜあんなに哀しかったのだろうと、不思議な気持ちにすらなります。あの頃の哀しみすべてを喜びに変えてくれるほどに海渡の存在は大きなものであり、かけがえのない大切なもの。

 元気にここまで大きくなってくれて本当にありがとう。

 そして、先生、わざわざありがとうございました。



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