++ 記憶の中へ
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■ 入ったのか落ちたのか 2004年05月30日(日)
 日曜日の昼下がり、海渡はうちへ遊びに来た友達と公園に行った。
 しばらくして友達が戻ってきて「海ちゃんがいなくなった」と言った。
あらら、また公園から出て行っちゃったのね。

 公園に行くと、砂場に穴が掘ってあって、友達が言うには「穴掘ってて、お水が・・・・」と言うと口ごもってどうもはっきりしない。公園を出て毎朝歩く通学路の方へ行ってしまって帰って来ないらしい。

 砂場の穴と友達が「水」と言った状況から判断するしかないのだけれど、どうも海渡は水を探しに行ったような気がする。大好きな絵本に砂場に掘った穴に水を入れるというのもあったし、どこからか水たまりがあると思ったのかもしれない。

 でも、あいにくここ数日は良いお天気で水たまりなんかない。
 あるとすれば「側溝」か「川」だ。まさか川に水を取りには行かないと思うが、万が一を考えるとちょっとゾッとした。

 友達が通学路より一本手前の道を指差して「こっちに歩いて行った」と言うので、同じ道を歩いていくとずっと向こう、川の手前の小道からひょっこり海渡が出てきた。しかも、裸足だ。

 近寄ると足はどろんこ、運動靴は側溝のそばにやっぱりどろんこになって置いてあった。どうも状況から見て側溝からはいあがったらしい。側溝というのは、深さ数センチほどの生活用水が排出されている小さな水の流れで、一見透き通って見えるが底にはヘドロらしきものや得体の知れない藻のようなものがいっぱい生えていて、はっきり言って汚い。海渡はここへ入ったのか、落ちたのか、どっちからしい。

 落ちたのなら、膝や太もも、腕にかすり傷があってもおかしくないのに、無傷のところを見ると、やっぱり靴のまま入ったんだろうなぁ・・・入ったはいいけれどヘドロでぬるぬるドロドロで気持ち悪くなって出て、どろんこになって濡れた靴を脱いで歩いていたところを私に見つかったということか・・・。

 「海ちゃん、水に入ってはいけません。汚い水を触るのもダメです。分かった?」

 海渡は、黙ったまま。もしかしてと思い

「それとも、落ちちゃったの?」

と聞いても黙ったまま。やっぱり入ったんだろうなぁ・・・・ああ。

 でも、川でなくて本当に良かった。



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