++ 記憶の中へ
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■ ごめんね 2004年05月24日(月)
 海渡を連れてスーパーへ買い物に行った。
 スーパーへは小さい頃から連れて行っているので、レジでお金を払わなければいけないこともよく分かっていて、お菓子など勝手に開けるということは一度もしたことがない。店の中の様子もよく知っていて、どこかへいなくなってしまってもたいていお菓子売り場あたりでうろうろしている。

 きのうもスーパーへ入ってすっといなくなったと思ったら、お菓子をふたつ持って戻ってきた。家で留守番している姉と自分の分らしい。お菓子を私に見せて「いい?」という表情だったので、「いいよ」と言うとカートのカゴにお菓子を入れてまたどこかへ行ってしまった。

 買い物が終わって、さあ海渡はまだあそこかなとお菓子売り場へ行ってみると、ななんと、スーパーのカゴが二つ床の上に置いてあってどちらも3分の1ほどの量のお菓子が入っているじゃーありませんか!!!

 2年生にもなってまだこんなことするなんて! 
 溜息とともにふつふつと怒りが・・・ふと見ると向こうの通路に海渡発見!呼び戻して

「海ちゃん、何これ! どうするのこんなに!」と一発。

 しかし、海渡は悪びれる様子もおろおろする様子もなく、きょとんとしている。そして、私が押しているカートのカゴを指差して

「海ちゃんのはこっち」 と言った。

「じゃあ、これは誰の分なの?」 と言うと

「・・・・パパとにいちゃん・・・・」 と小さな声で言った。

 そうか、パパと兄ちゃんの分のお菓子をカゴに入れていたのか、でもこれはあまりにひどい。私はこのたくさんの量のお菓子を全部また陳列棚に戻さないといけないことを考えると思わず溜息が出た。小さい頃はこういうことしたこともあったけど、まさかまだやるなんて・・・ショックだ・・・あぁ

 がっくりしながら一つずつ戻していると、3〜5歳くらいの女の子二人がやってきて、両手に持っているお菓子を床の二つのカゴのなかへポイっと放り投げた。

「は???」 

 すると、女の子の後ろからかなり高齢のおじいちゃんがやってきて

「どれ、お菓子はこれで全部か?」

と言うと女の子といっしょにお菓子のどっさり入ったカゴを持ってレジの方へ歩いていってしまった。

 呆然とそれを見送ったあと私は、ハッと気づいた。

「ごめんね〜、海ちゃんがやったんじゃなかったんだね。ごめんね。」

 海渡はどうもまだ様子が飲み込めていないようで、やっぱりきょとんとしたままだった。私はあんなことをするのは、海渡以外にあり得ないと思い込んで、海渡がやったんだと決め付けて叱ってしまった。「海ちゃんのはこっち」とちゃんと言葉で説明していたのに、まったく聞く耳を持ってなかった。

 海渡も多分、お菓子の入ったカゴが不思議だったんだろう。
 自分の分とお姉ちゃんの分はさっき買ったから、じゃあこれはパパと兄ちゃんだと単純に思って「これはパパと兄ちゃん」と口から出たんだと思う。

 母の後悔を知ってか知らずか、海渡は何事もなかったように嬉しそうににこにこと笑顔で私のカートを押してくれた。

 ああ、本当にごめんね。




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