++ 記憶の中へ
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■ 冒険 2004年04月29日(木)
 この間、ひとりでマンション隣の公園へ行かせて、結局約束通り公園にいられなかった海渡。親のいいつけは、いざとなると忘れてしまうんだと、あのときの一件で分かりながら、今日もう一度行かせてみた。

 お母さん、ベランダから見てるからね!と釘を刺して送り出す。

 ベランダから観察。
 誰だかわからないけれど、先に公園にいる男の子のもとへ走っていく海渡。しばらく二人でブランコに乗っていた。男の子は立ちこぎで限界に近いほど大きく揺らしている。海渡は相変わらずのすわりこぎ、しかも自力で大きく揺らすことができないので、だんだん揺れが小さくなっていく。そのたびに、足を地面に下ろしてまた初めからやり直している。

 そのうちにブランコに飽きて、海渡がジャングルジムへ走って行った。男の子があとを追いかける。海渡はここのジャングルジムにはまだ登れないはず・・・・だったのに、ゆっくりと時間をかけてよじ登っててっぺんに立っている。初めて見た。

 滑り台から滑り降りてきて、もう一度登ろうとしたが、うまくいかなかったらしく、しばらく上のほうで止まっている。登ることも降りることもできなくなったらしい。どうしよう、行ったほうがいいかな、握力の弱い海渡はいつ落ちても不思議じゃない。

 迷っていたら、先に上に上っていた男の子が何か言っている。しばらく動かなかった海渡がその声をきっかけに決心したのか、やっとよじ登り、なにやら歓声を上げて滑り台を滑っている・・・安堵・・・・

 ここで安心して、いったん部屋に入り、数分後再びベランダから覗いたら・・・もう公園にいなかった!(怒)

 周りにもいる気配がないので、仕方が無く探しに行くことにした。
 すると、エレベーターホールでどこからか、海渡の声がする。階下か階上か分からないけれど、このマンションのどこかにいるらしい。

 上に行ったり、下に行ったりしながら探すけれど、見当たらず一度部屋に戻ってもう一度、ベランダから公園を眺めていたら、「ただいま〜」と海渡が帰ってきた。

 大満足の笑顔。

 あんまり嬉しそうに帰ってきたので、叱る気になれなかった。

 こういうことをこれからも何回も繰り返していかないといけないんだろう。きちんと名前も住所も言えない知的障害児を一人で外へ出すというのはもしかしたら無謀なことかもしれない。でもこれから陽が長くなり、他の子供達が公園で楽しそうに遊んでいるのに、部屋の中へ閉じ込めておくわけにもいかない。またいつまでも親がくっついて外遊びへついて行くのも限界があるのも事実。

 他の子供達が場所を移動したときに海渡がついていけるかどうかという一番の不安はあるけれど、やっぱり少しずつ外の世界へ出ていかないとね。

 こうなると、これは海渡の冒険というよりは、親の冒険かもしれない。





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