++ 記憶の中へ
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■ 懐かしい再会〜増田太郎さんとエルム〜 2002年11月08日(金)
 先日、とあるショッピングセンターの書店に立ち寄ったときのこと、新刊コーナーで一冊の本が目に止まりました。

 本のタイトルは「毎日が歌ってる」 著者は、増田太郎さん。

 一気に私の記憶は7年前へタイムスリップしました。
 7年前、海渡もまだ産まれておらず、インターネットも知らなかった私は、長男の発達の遅れに関する情報を得るために、MS-DOSしか動かないノートパソコンでパソコン通信にはまっていました。

 たまたま、NIFTY-Serve(現@nifty)の「障害児教育フォーラム」の電子会議室の中で、英会話テキストの英文入力をしてくれるボランティアの募集をしていたのが増田太郎さんで、そのボランティアをやらせていただいたのが私でした。増田さんは視覚障害があり、入力した英文メールを音声パソコンで聞きながら勉強するためでした。

 どれだけの期間英文入力のメールのやりとりをしたのか、今ではもうはっきりとは覚えていないのですが、やりとりするメールの中で増田さんからバンドを組んで音楽をやっていることを教えていただき、一本のカセットテープと盲導犬エルムと増田さんご自身が写っている写真を何枚か送ってくださいました。
 ラブラドールレトリバーのエルムは凛々しくて賢そうな犬で、増田さんは人懐こい素敵な笑顔の青年でした。「MISTRAL」というバンド名がついたカセットテープには、シンプルだけれど優しく力強い増田さんの歌声がぎっしり詰まっていました。

 その後、海渡が産まれて、それを知らせたときの増田さんからの返事のメールには、ありきたりな慰めの言葉や励ましの言葉でない、けれど心にずっしりと響く言葉が書かれてありました。それからライブをしたり、CDを出したりと精力的に活動されてゆき、私の方も海渡のことや仕事に追われて、だんだんと疎遠になっていきました。
 でも、写真やテープはその後も大事にしまってあり、時折海渡がエルムの写真を見つけては「ワンワン」と眺めていました。
 
 そして、あれから7年たって、書店で思いがけず懐かしい再会をしたのです。早速本を買い、音楽活動も様々な紆余曲折がありながらも順調に進んで、NHKの「みんなのうた」で増田さんが作った曲が流れたり、テレビやラジオにも出演されていることを知りました。そして、9年半連れ添った盲導犬エルムの死。

 懐かしさと嬉しさと驚きでいっぱいになって、メールを送ったところ、私のことも海渡のことも覚えているという嬉しいメールが届きました。今度、《47都道府県すべてを周るライブツアー》をするそうで、7年前と同じく明るい気さくなメールでした。

 「毎日が歌ってる」の中には、養護学校でライブを行ったことや、街中で出会う「ちょボラ」(ちょこっとボランティア)な人たちの楽しいやりとりや、上手なちょボラの方法なども書かれていました。
 なにより、増田さんの素直でまっすぐな気持ちが伝わってくる、結果じゃなくてその過程を楽しんで行こうという姿勢に、感動しました。

 そして、おかあさんに向けての「いつも、いっつもありがとう」の言葉。ライブの後の「生まれてきて良かった」という言葉に、母親である私はつい目頭が熱くなってしまいました(笑)

 障害者の成功物語という内容でもないし、ましてや感動秘話の類の本でもありません。挫折も困難も素直にまっすぐ受け止めて、常に自分らしく生きていきたいという一人の人間の姿が新鮮で素敵です。そして「読むライブ」とサブタイトルがついているだけあって、読んだ後とても爽やかな気持ちになれるのも不思議でした。
 懐かしい「MISTRAL」のテープ、ここのところ暇さえあれば聞いています。この7年、私も海渡が生まれていろんなことがあり、ついつい悲観的な考えに傾きやすいのですが、増田さんのように今を楽しんじゃうくらいの前向きな気持ちを持とうと改めて思うようになりました。

 増田さん、ライブ頑張ってください。応援しています。
 そして、エルムのご冥福を心から祈ります。

 増田太郎さんのHPはこちら
 http://taro.giganet.net/
 





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