++ 記憶の中へ
Written by free
Photo by
Designed by caprice*



■ 静かな夜 2002年10月18日(金)
 海渡のパパは障害者の作業所で指導員をしています。
 今月に入ってから、「グループホーム」での泊まりの勤務を週に1〜2回することになり、今日も泊まり勤務となりました。(グループホームというのは、障害のある人たちが文字通りグループでひとつの家に協同で生活することです。そこで一緒に寝泊りして家事などサポートする人のことを「世話人」というらしいのですが、海渡のパパも週に1、2回だけですが、その「世話人」ということになります。)

 父親のいない4人だけの夕食がすんで、見たいテレビが終わると長男と長女はそれぞれの自分の部屋に行ってしまいました。私と海渡だけが居間に残りました。

「海ちゃん、お風呂はいろか」
「うん、おふろ」

やけに素直に海渡はお風呂へ直行していきます。発音のはっきりしない海渡のおしゃべりを聞きながら、海渡とふたりだけの時間が過ぎていきます。用意しておいたパジャマを自分でさっさと着た海渡は

「オーラ(コーラ)、くーしゃい(ください)」

と言いました。「海ちゃん、アイスクリーム食べよか」
海渡の顔が嬉しさでいっぱいになりました。ひとつのカップアイスを一緒に食べていると不思議な気持ちになります。海渡がもし、いなかったら私はこの時間何をしているのだろう。上の子どもたちは、もう母親にまとわりつくこともなく自分の部屋で好きなことをしている。もうパジャマを着る手伝いをすることもなく、寝かしつけることもない。海渡がいなかったら、私はどんな生活をしているのだろう。アイスクリームを美味しそうに口へ運ぶ海渡が、ぼんやりしている私の口元へスプーンを持ってきて

「おかあさん・・・・」

と言って食べさせてくれました。もう、海渡がいない生活は想像できないし、ばかげたことなのに、海渡と二人きりの夜がものすごく静かで、それでふとそんなことを考えてしまったのでしょう。

海渡もいつか親元を離れて「グループホーム」で暮らすようになるかもしれません。その頃には長男も長女も大人になっていて、この家にはもういないかもしれません。海ちゃんも行ってしまったら寂しいなぁ・・・自立して仲間と暮らしていけるのならそれが一番いいはずなのに、何だかちょっと寂しい。

アイスクリームを食べた海渡は満足して、その後自分からお布団に入ってすぐに眠ってしまいました。ひとりになっちゃったなぁ、久しぶりに一人でゆっくりしようかなと思っていたら、長男が「ぽんぽこ」を見るために居間に戻ってきてしまいました。ゆっくりひとりっきりはあと2時間あまりお預けかな。




backINDEXnext


My追加