右左口峠(うばぐちとうげ)にあかり連ねて 炭売りが雪踏みくだる遠きまぼろし (曽根寿子) 冒頭の短歌は、「方代の里なかみち短歌大会」にて特選(4等)となった母の作品である。母の幼き頃の記憶を歌にしたものだが、実際私は目にしたことのない山里の情景が目に浮かんでくるようだ。故郷と古き思い出は、人々に特別な情感をかき立てるものらしい。 と、まずは身内自慢になってしまったが、郷里の山梨に帰ってまず、母の入選のニュースを知らされた。 「実はね、僕もある短歌大会に応募した作品が入選したんだよ」と、今度はこちらから返した。「筑波の里愛の歌百選」に選ばれたのは、次の歌だ。
君となら歩いてみたい雨の道 二人のゆくてに虹をさがして (夏撃波)
と、次は自らの自慢になっちゃったね。でも、沢山応募したなかの一首だけなので、まだまだだと思っている。 さて、郷里に帰った私だが、帰りたいはずの場所が私には同時に帰りたくない場所でもあった。愛すればこそ、いつだって自らの思いは裏切られ、傷心のまま遠ざかっていく故郷。そうなのだ、私は未だに故郷との距離を測りかねているのだ。 ああ、夢は今も巡りて、思いいずる故郷。
|