| 2005年03月10日(木) |
現代能楽詩「隅田川」 |
(謡) 雲霞、あと遠山に越えなして、あと遠山に越えなして、 幾関々の道すがら、国々過ぎて行くほどに、 ここぞ名におふ隅田川、 渡りに早く着きにけり、渡りに早く着きにけり。
川べりの道にたたずむ ひとりの老女 未だ帰らぬ息子を待ちわび 来る日も来る日も 同じ道をやってくる
春のうららの隅田川 霞たなびくその先に果てなく続く荒野 累々たる屍体の山が築かれている むくろの前にひざまずき 老女はかすかにほほえんだ
「わが息子よ、やっと巡り会えたね」 と、いとおしむように、いとおしむように語りかけた
と思いきや、 世界は時空を越え そこに幻の都が浮かび上がる 飛来する爆撃機の前に 砂の城は脆くも崩れ去った 本土決戦、一億火の玉、 街は焦土と化した
夢かうつつか、うつつか夢か、 人の記憶は薄れゆく
川は今日も静かな流れをたたえている・・・
<解説> 60年前の今日(3月10日)は、「東京大空襲」があり、10万人もの人々が亡くなられた日だそうな。この現代能楽詩「隅田川」は、能の「隅田川」を下敷きにしつつ、「東京大空襲」をイメージしながら作った作品である。 昨年夏、隅田川の川べりで行われた詩の朗読イベントに飛び入り参加した際、直前に作ったものだが、その後何度か発表を繰り返してきた。私にとっては、非常に思い入れのある作品である。
|