今年初めての上京。月蝕歌劇団公演『家畜人ヤプー』を観に行く。戦後文学最大の奇書とも言われる沼正三の『家畜人ヤプー』(三島由紀夫、澁澤龍彦、寺山修司らも絶賛!)が、高取英・演出、J.A.シーザー・音楽(シーザーの呪術的な音楽はもう最高!)で再演される、とのことで、楽しみにしてたのだが・・・。 役者が、ね。役者についてはさほど期待してなかったけど、それにしても、ね。無茶苦茶ひどかったわけじゃないけど、原作は「戦後最大の奇書」だからね、ましてJ.A.シーザーの音楽が入るんだから、もっと役者の力で観客をゾクゾクさせてほしかった。 まず、主役の第一声、全然声が出ていなかった。これが致命的といってよかった。しょっちゅう芝居を観ている私には、芝居が始まってから2〜3分で、その芝居のおおよそのレベルが推測できる。冒頭で観客をどこまで演劇世界に引き込むことができるか。それによって、芝居の評価は大きく左右されるものだ。今回の「月蝕歌劇団」の芝居では、最後まで醒めた目で観劇する結果となった。後半盛り返した感もあったが、物足りなさは最後まで残った。とてもよいホンを取り上げていただけに残念に思う。
今回は本編の他に、詩劇ライヴ『奇譚少年の詩』も観てきた。3組のライブ、そしてライブの合間々々に繰り広げられる「月蝕」女優陣による小芝居、という構成。こちらのほうは余興みたいなものだったので、お気楽な気分で楽しめた。遊び心いっぱいで、なかなかよかったとは思うのだが・・・。やはり本編のほうで「真剣に遊んで欲しかった」と思う。 ところで、今回特別ゲストとして、PANTA(元・「頭脳警察」)のライブがあった。2曲だけしか歌わなかったけど、しゃがれた声がとてもシブかった。本編と詩劇ライブの全体を通じて、PANTAの歌がいちばん印象に残ったが、それは演劇人の側からすれば「敗北」ではないか。 複雑な思いを胸に、私は劇場をあとにした。
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