バカ恋
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■ 元気なマドレーヌ ■



「マドレーヌ・・・私のマドレーヌ」


大好きだった叔母が小さいアタシをそう呼んで居た。





料理学校の先生をして居た彼女は、

何時も自信に満ち溢れていて、とても素敵な人だった。

最後まで独身で子供が居なかった彼女は、

アタシを大層可愛がってくれて、色んな処に連れて行ってくれた。

豊な感性は沢山の経験で培うものよ

そう言って彼女は、

アタシの視覚、聴覚、味覚を刺激する素晴らしい体験をさせてくれた。




彼女が癌に冒されて此の世を去ってから、

今日で伍年になる。

何処までも気丈だった彼女は、

痩せ行く身体を人には見せたくないと、

床に伏せている事実を友人達に隠し続けた。

最後の其の時まで。




あの日もこんな春の麗らかな一日だった。

あれからもう伍年も経つんだね。




昨日立ち寄った本屋の絵本コーナーに、

『げんきなマドレーヌ』を見つけた。

アタシの大好きな本。

叔母がアタシに教えてくれた大切な事を思い出しました。










今になってようやく、此ノ言葉の本当の意味が判ったような気がします。







有難う、叔母さん。

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