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■ 失われた約束 ■ ほんの少しの好奇心。 其れがそもそもの始まり。 誰もがそう。 好奇心が恋心を刺激するのだ。 ++++++++++++++++++ かつて、あたしとモリは恋人同士だった事が在る。 恋人と云っても、御飯事に毛の生えたようなモノだったけど、 今でもアタシの勲章。 最初は御遊びのようなアイコンタクト。 其れが何時しか「一緒に帰る?」の電波となり、 何時もの帰り道、 自転車に乗ったモリは橋のたもとで アタシを待ってくれて居た。 アタシ達の家は学校を挟んで正反対だったのに、 何時もモリはアタシを待ってくれて居た。約束の其の場所で。 其れからアタシ達は学校で或った出来事や、 友達の事、先生の事、家族の事、勉強の事を 彼是話しながら、時には手を繋いで、 アタシの家までの参拾伍分を惜しむように歩いた。 川沿いの道を二人乗りして帰った時、 先生に見つかって、急いで逃げたっけ。 近所の人に声を掛けられて、 真っ赤になってうつむいたアタシを、 モリが突付いて笑ってたっけ。 うちの近くで母上とすれ違った時、 驚いた母上にモリは「こ、こんにちは」って 凄く緊張して挨拶してたっけ。 アタシ達の初めてのキスは、 中学校の卒業式が終わって直ぐ。 うちに遊びに来ていたモリは、 帰り際にアタシに言った。 目・・・つぶって 高鳴る心臓の音。 近づくモリの顔。 思いがけず吹き出してしまったフタリ。 何回も何回もやり直ししては吹き出して、 最後はモリに怒られた。 あっと云う間の数秒間。 あの時のキスの味はどんなだったろう。 夜の風がとても冷たくて、 鼻も手も息も凍りそうだったけど、 頬だけは何時までも熱かったのを覚えている。 見上げた星空がとても美しかったのを覚えている。 高校が別だったアタシ達は、逢う事も少なくなった。 モリは新しい友達が出来て、 アタシはバンドを始めた。 お互いの新しい生活が楽しくて、 アタシ達の事は後回し。 何時しかお互いの存在も忘れがちになっていた。 春が過ぎ、夏が来て、 そして、別れもやって来た。 別れ際にモリとアタシは小さな約束をした。 |
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